タグ:太宰治名言集, 恋愛, 愛, 希望, 哲学, 真理, 生活, 自己, 処世, 人生, 運命, 戦争, 思想, 創作, 遺書, 檀一雄, 野原一夫
2024/02/24 (金) 更新
No | 分類 | 名言 | 作品 | 書籍等 |
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1 | 恋愛 | 恋愛は、チャンスではないと思う。私はそれを意志だと思う。 | チャンス | 『津軽通信』 新潮文庫 |
2 | 恋愛 | 恋愛とは何か。私は言う。それは非常に恥ずかしいものである。 | チャンス | 『津軽通信』 新潮文庫 |
3 | 恋愛 | 私は、ひとの恋愛談を聞く事は、あまり好きでない。恋愛談には、かならず、どこかに言い繕いがあるからである。 | 令嬢アユ | 『ろまん燈籠』 新潮文庫 |
4 | 恋愛 | 戦闘、開始。 もし、私が恋ゆえに、イエスのこの教えをそっくりそのまま必ず守ることを誓ったら、イエスさまはお叱りになるかしら。なぜ、「恋」がわるくて、「愛」がいいのか、私にはわからない。同じもののような気がしてならない。 | 斜陽 | 『斜陽』 新潮文庫 |
5 | 恋愛 | 人間は恋と革命のために生れて来たのだ。 | 斜陽 | 『斜陽』 新潮文庫 |
6 | 恋愛 | 女は、恋をすれば、それっきりです。ただ、見ているより他はありません。 | 女の決闘 | 『新ハムレット』 新潮文庫 |
7 | 恋愛 | 私はあなたを誇りにしていますし、また、生れる子供にも、あなたを誇りにさせようと思っています。 私生児と、その母。 けれども私たちは、古い道徳とどこまでも争い、太陽のように生きるつもりです。 (中略) いまの世の中で、一ばん美しいのは犠牲者です。 | 斜陽 | 『斜陽』 新潮文庫 |
8 | 恋愛 | 惚れられるつらさ、愛せられる不安 | 人間失格 | 『人間失格』 新潮文庫 |
9 | 恋愛 | 革命も恋も、実はこの世で最もよくて、おいしい事で、あまりいい事だから、おとなのひとたちは意地わるく私たちに青い葡萄だと嘘ついて教えていたのに違いないと思うようになったのだ。私は確信したい。人間は恋と革命のために生れて来たのだ。 | 斜陽 | 『斜陽』 新潮文庫 |
10 | 恋愛 | 愛することは命がけだよ。甘いとは思わない。 | 雌に就いて | 『二十世紀旗手』 新潮文庫 |
11 | 恋愛 | 恋は、必ず片恋のままで、かくして置け。女に恋を打ち明けるなど、男子の恥だ。思えば、思われる。それを信じて、のんきにして居れ。 | 困惑の弁 | 『太宰治全集 10』 ちくま文庫 |
12 | 恋愛 | てれくさくて言えないというのは、つまりは自分を大事にしているからだ。 | 新ハムレット | 『新ハムレット』 新潮文庫 |
13 | 恋愛 | 破壊思想。破壊は、哀れで悲しくて、そうして美しいものだ。 | 斜陽 | 『斜陽』 新潮文庫 |
14 | 恋愛 | 生れて来てよかったと、ああ、いのちを、人間を、世の中を、よろこんでみとうございます。 はばむ道徳を、押しのけられませんか? | 斜陽 | 『斜陽』 新潮文庫 |
15 | 恋愛 | やっぱり、ちょっと男に色気を起させるくらいの女のほうが、善良で正直なのかも知れません。 | 嘘 | 『津軽通信』 新潮文庫 |
16 | 恋愛 | ただ、好きなのです。それで、いいではありませんか。純粋な愛情とは、そんなものです。 | ろまん燈籠 | 『ろまん燈籠』 新潮文庫 |
17 | 恋愛 | 悪魔、でなければ、白痴だ。いやいや、女は、みんなあんなものなのかも知れない。よろこびも、信仰も、感謝も、苦悩も、狂乱も、憎悪も、愛撫も、みんな刹那だ。 | 火の鳥 | 『新樹の言葉』 新潮文庫 |
18 | 恋愛 | ボクはもう他人に向って好き、嫌いを云々しますまい。好きだから好きと、云ったのに、嫌いになったら、嫌いになったと云えない。 | 虚構の春 | 『二十世紀旗手』 新潮文庫 |
19 | 恋愛 | 女性には、意志薄弱のダメな男をほとんど直観に依って識別し、これにつけ込み、さんざんその男をいためつけ、つまらなくなって来ると草履の如く捨ててかえりみないという傾向がございますようで | 男女同権 | 『グッド・バイ』 新潮文庫 |
20 | 恋愛 | 「きれいなお月さまだわねえ。」なんて言って手を握り合い、夜の公園などを散歩している若い男女は、何もあれは「愛し」合っているのではない。胸中にあるものは、ただ「一体になろうとする特殊な性的煩悶」だけである。 | チャンス | 『津軽通信』 新潮文庫 |
21 | 結婚 | 夫と妻は、その生涯において、幾度も結婚をし直さなければならぬ。お互いが、相手の真価を発見して行くためにも、次々の危機に打ち勝って、別離せずに結婚をし直し、進まなければならぬ。 | ろまん燈籠 | 『ろまん燈籠』 新潮文庫 |
22 | 結婚 | ここに、新しい第二の結婚生活がはじまる。曰く、相互の尊敬である。相互の尊敬なくして、真の結婚は成立しない。 | ろまん燈籠 | 『ろまん燈籠』 新潮文庫 |
23 | 結婚 | 夫婦愛というものは、この世の中で一ばん強いもので、肉親の愛よりも、尊いものにちがいない。 | 女生徒 | 『走れメロス』 新潮文庫 |
24 | 結婚 | 結婚は、家庭は、努力であると思います。 厳粛な努力であると信じます。浮いた気持ちは、ございません。貧しくとも一生大事に努めます。ふたたび私が、破婚を繰りかえしたときには、私を、完全の狂人として、すててください。 | 井伏鱒二宛書簡 1938(昭和13)年10月25日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
25 | 愛 | ああ、もはや憩いも、僕にはてれくさくなっている。僕は、ひとりの女をさえ、注釈なしには愛することができぬのだ。おろかな男は、やすむのにさえ、へまをする。 | 道化の華 | 『晩年』 新潮文庫 |
26 | 愛 | 本当に愛しているならば、無意識に愛の言葉も出るものだ。どもりながらでもよい。たった一言でもよい。せっぱつまった言葉が出るものだ。愛は言葉だ。言葉がなくなりゃ、同時にこの世の中に、愛情もなくなるんだ。 | 新ハムレット | 『新ハムレット』 新潮文庫 |
27 | 愛 | 怒涛に飛び込む思いで愛の言葉を叫ぶところに、愛の実体があるのだ。 | 新ハムレット | 『新ハムレット』 新潮文庫 |
28 | 愛 | だって人は、本当に愛して居れば、かえって愛の言葉など、白々しくて言いたくなくなるものでございます。 | 新ハムレット | 『新ハムレット』 新潮文庫 |
29 | 愛 | 誰がこの私のひたむきの愛の行為を、正当に理解してくれることか。いや、誰に理解されなくてもいいのだ。私の愛は純粋の愛だ。人に理解してもらう為の愛ではない。 | 駈込み訴え | 『走れメロス』 新潮文庫 |
30 | 愛 | 私はその日までHを、謂わば掌中の玉のように大事にして、誇っていたのだということに気附いた。こいつの為に生きていたのだ。私は女を、無垢のままで救ったとばかり思っていたのである。 | 東京八景 | 『走れメロス』 新潮文庫 |
31 | 愛 | 愛は最高の奉仕だ。みじんも、自分の満足を思ってはいけない。 | 火の鳥 | 『新樹の言葉』 新潮文庫 |
32 | 愛 | 愛は言葉だ。言葉が無くなれや、同時にこの世の中に、愛情も無くなるんだ。愛が言葉以外に、実体として何かあると思っていたら、大間違いだ。 | 新ハムレット | 『新ハムレット』 新潮文庫 |
33 | 愛 | 愛は、この世に存在する。きっと、在る。見つからぬのは、愛の表現である。その作法である。 | 思案の敗北 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
34 | 愛 | おれは、この女を愛している。どうしていいか、わからないほど愛している。そいつが、おれの苦悩のはじまりなんだ。けれども、もう、いい。おれは、愛しながら遠ざかり得る、何かしら強さを得た。生きて行くためには、愛をさえ犠牲にしなければならぬ。 | 姥捨 | 『きりぎりす』 新潮文庫 |
35 | 愛 | 「愛」は困難な事業である。 | チャンス | 『津軽通信』 新潮文庫 |
36 | 愛 | 愛しています、というこの言葉は、言葉にすれば、なんとまあ白々しく、きざっぽい、もどかしい言葉なのか、私は、言葉を憎みます。 | 古典風 | 『新ハムレット』 新潮文庫 |
37 | 愛 | 男は、だって、気取ってばかりいて可哀そうだもの。ほんとうの女らしさというものは、あたし、かえって、男をかばう強さに在ると思うの。 | 火の鳥 | 『新樹の言葉』 新潮文庫 |
38 | 愛 | 憤怒こそ愛の極点。 | 創生記 | 『二十世紀旗手』 新潮文庫 |
39 | 愛 | まことの愛の有様は、たとえば、みゆき、朝顔日記、めくらめっぽう雨の中、ふしつ、まろびつ、あと追うてゆく狂乱の姿である。君ひとりの、ごていしゅだ。自信を以て、愛して下さい。 | HUMAN LOST | 『二十世紀旗手』 新潮文庫 |
40 | 愛 | 聖書にこれあり。 | 春の枯葉 | 『グッド・バイ』 新潮文庫 |
41 | 愛 | 愛しているのは、恥ずかしい事です。また、愛されているのも何だか、きまりの悪い事です。だから、どんなに深く愛し合っていても、なかなか、好きだとは言えないものです。 | 新ハムレット | 『新ハムレット』 新潮文庫 |
42 | 希望 | 明日もまた、同じ日が来るのだろう。幸福は一生、来ないのだ。それは、わかっている。けれども、きっと来る、あすは来る、と信じて寝るのがいいのでしょう。 | 女生徒 | 『走れメロス』 新潮文庫 |
43 | 希望 | 幸福は一夜おくれて来る。 | 女生徒 | 『走れメロス』 新潮文庫 |
44 | 希望 | 兄さんは、まだ寝ているのだ。むっくり上半身を起こして、「なんだ、もう行くのか。神の国は何に似たるか。」と言って、笑った。「一粒の芥種のごとし。」と答えたら、「育ちて樹となれ。」と愛情のこもった口調で言った。 | 正義と微笑 | 『正義と微笑』 SDP Bunko |
45 | 希望 | 青春は、友情の葛藤であります。純粋性を友情に於いて実証しようと努め、互いに痛み、ついには半狂乱の純粋ごっこに落ちいる事もあります。 | みみずく通信 | 『ろまん燈籠』 新潮文庫 |
46 | 希望 | いい夢は、忘れたくない。人生になにかつながりを持たせたい。 | パンドラの匣 | 『パンドラの匣』 新潮文庫 |
47 | 希望 | さらば読者よ、命あらばまた他日。元気で行こう。絶望するな。では、失敬。 | 津軽 | 『津軽』 新潮文庫 |
48 | 希望 | 私たちは、生きていさえすればいいのよ | ヴィヨンの妻 | 『ヴィヨンの妻』 新潮文庫 |
49 | 希望 | 私は、この世の中に生きている。しかし、それは、私のほんの一部分でしか無いのだ。同様に、君も、またあのひとも、その大部分を、他のひとには全然わからぬところで生きているに違いないのだ。 | フォスフォレッスセンス | 『グッド・バイ』 新潮文庫 |
50 | 希望 | 女はやさしくあれ、人間は弱いものをいじめてはいけません | 火の鳥 | 『新樹の言葉』 新潮文庫 |
51 | 希望 | 僕たち、さびしく無力なのだから、他になんにもできないのだから、せめて言葉だけでも、誠実こめてお贈りするのが、まことの、謙譲の美しい生きかたである、と僕はいまでは信じています。 | 葉桜と魔笛 | 『新樹の言葉』 新潮文庫 |
52 | 希望 | 地位や名聞を得なくたって、お金持ちにならなくたって、男そのものが、立派に尊いのだから、ありのままの御身に、その身ひとつに、ちゃんと自信を持っていてくれれば、女は、どんなにうれしいか。 | 火の鳥 | 『新樹の言葉』 新潮文庫 |
53 | 希望 | 何の打算も無い好意、押し売りでは無い好意、二度と来ないかも知れぬひとへの好意、自分には、その白痴か狂人の淫売婦たちに、マリヤの円光を現実に見た夜もあったのです。 | 人間失格 | 『人間失格』 新潮文庫 |
54 | 希望 | 私のいま夢想する境涯は、フランスのモラリストたちの感覚を基調とし、その倫理の儀表を天皇に置き、我等の生活は自給自足のアナキズム風の桃源である。 | 苦悩の年鑑 | 『グッド・バイ』 新潮文庫 |
55 | 希望 | ドンキホーテ。ふまれても、けられても、どこかに小さい、ささやかなやせた「青い鳥」いると、信じて、どうしても、傷ついた理想、捨てられませぬ。 | 井伏鱒二宛書簡 1936(昭和11)年09月19日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
56 | 哲学 | 人間は、めしを食べなければ死ぬから、そのために働いて、めしを食べなければならぬ、という言葉ほど自分にとって難解で晦渋で、そうして脅迫めいた響きを感じさせる言葉は、無かったのです。 | 人間失格 | 『人間失格』 新潮文庫 |
57 | 哲学 | 人間は、みな、同じものだ。 なんという卑屈な言葉であろう。人をいやしめると同時に、みずからをもいやしめ、何のプライドも無く、あらゆる努力を放棄せしめるような言葉。 | 斜陽--直治の遺書 | 『斜陽』 新潮文庫 |
58 | 哲学 | 「敗北とは何ですか。」 「悪に媚笑する事です。」 「悪とは何ですか。」 「無意識の殴打です。意識的の殴打は、悪ではありません。」 | かすかな声 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
59 | 哲学 | ぽかんと花を眺めながら、人間も、本当によいところがある、と思った。花の美しさを見つけたのは人間だし、花を愛するのも人間だもの。 | 女生徒 | 『走れメロス』 新潮文庫 |
60 | 哲学 | 言葉というものは、生きている事の不安から、芽ばえて来たものじゃないですかね。 | 「お伽草紙」浦島さん | 『お伽草紙』 新潮文庫 |
61 | 哲学 | 人は人に影響を与えることもできず、また、人から影響を受けることもできない | もの思う葦 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
62 | 哲学 | 幸福感というものは、悲哀の川の底に沈んで、幽かに光っている砂金のようなものではないだろうか。 | 斜陽 | 『斜陽』 新潮文庫 |
63 | 哲学 | おそろしいのはね、この世の中の、どこかに神がいる、という事なんです。いるんでしょうね? | ヴィヨンの妻 | 『ヴィヨンの妻』 新潮文庫 |
64 | 哲学 | アカルサハ、ホロビノ姿デアラウカ。人モ家モ、暗イウチハマダ滅亡セヌ。 | 右大臣実朝 | 『惜別』 新潮文庫 |
65 | 哲学 | 所謂「官僚的」という気風の風洞は何か。私は、それをたどって行き、家庭のエゴイズム、とでもいうべき陰鬱な観念に突き当り、そうして、とうとう、次のような、おそろしい結論を得たのである。 曰く、家庭の幸福は諸悪の本。 | 家庭の幸福 | 『ヴィヨンの妻』 新潮文庫 |
66 | 哲学 | 神に問う。信頼は罪なりや。 | 人間失格 | 『人間失格』 新潮文庫 |
67 | 哲学 | 太宰「ねえ。壇君。包茎というものは、これはいいもんだ」 山岸「そうだよ。ギリシャの彫刻はどれを見たって、みんな包茎さ」 太宰「すると、俺達の文学は、包茎の文学というわけだ。こりゃ、ひでえ」 壇 「つましくもあり、悲しみも添い、又、やけくそでもあるわけか」 | 小説 太宰治 | 檀一雄『小説 太宰治』 P+D BOOKS |
68 | 哲学 | 人間の生活の苦しみは、愛の表現の困難に尽きるといってよいと思う。この表現のつたなさが、人間の不幸の源泉なのではあるまいか。 | 惜別 | 『惜別』 新潮文庫 |
69 | 哲学 | 自殺するもよし、百歳の長命を保つもよし、人おのおの、おのれのみちに生き切ること、自我の塔を築きあげること、これ以外にないと思います。 | 鰭崎潤宛書簡 1935(昭和10)年09月30日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
70 | 真理 | 老人の永い生涯に於いて、嘘でなかったのは、生れたことと、死んだことと、二つであった。 | 逆行 | 『晩年』 新潮文庫 |
71 | 真理 | 私は真実のみを、血まなこで、追いかけました。私は、いま真実に追いつきました。私は追い越しました。そうして、私はまだ走っています。真実は、いま、私の背後を走っているようです。笑い話にもなりません。 | 碧眼托鉢 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
72 | 真理 | 金魚も、ただ飼い放ち在るだけでは、月余の命、保たず。 | HUMAN LOST | 『二十世紀旗手』 新潮文庫 |
73 | 真理 | 苦しみ多ければ、それだけ、報いられるところ少し。 | 碧眼托鉢 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
74 | 真理 | 理窟はないんだ。女の好ききらいなんて、ずいぶんいい加減なものだと思う。 | 女生徒 | 『走れメロス』 新潮文庫 |
75 | 真理 | 本当の気品というものは、真黒いどっしりした大きい岩に白菊一輪だ。 | 津軽 | 『津軽』 新潮文庫 |
76 | 真理 | 僕は今まで、説教されて改心したことが、まだ一度もない。説教している人を偉いなあと思ったことも、まだ一度もない。 | 正義と微笑 | 『正義と微笑』 SDP Bunko |
77 | 真理 | 「自信とは何ですか。」 「将来の燭光を見た時の心の姿です。」 「現在の?」 「それは使いものになりません。ばかです。」 | かすかな声 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
78 | 真理 | 富士には、月見草がよく似合う。 | 富嶽百景 | 『富嶽百景・走れメロス 他八篇』 岩波文庫 |
79 | 真理 | 酒ハ酔ウタメノモノデス。ホカニ功徳ハアリマセヌ。 | 右大臣実朝 | 『惜別』 新潮文庫 |
80 | 真理 | 不良とは、優しさの事ではないかしら。 | 斜陽 | 『斜陽』 新潮文庫 |
81 | 真理 | 不良でない人間があるだろうか | 斜陽 | 『斜陽』 新潮文庫 |
82 | 真理 | 鉄は赤く熱しているうちに打つべきである。花は満開のうちに眺むべきである。私は晩年の芸術というものを否定している。 | もの思う葦 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
83 | 真理 | 男って、正直ね。何もかも、まる見えなのに、それでも、何かと女をだました気で居るらしいのね。犬は、爪を隠せないのね。 | 火の鳥 | 『新樹の言葉』 新潮文庫 |
84 | 真理 | 他の生き物には絶対に無くて、人間にだけあるもの。それはね、ひめごと、というものよ。 | 斜陽 | 『斜陽』 新潮文庫 |
85 | 真理 | 人間は嘘をつく時には、必ず、まじめな顔をしているものである | 斜陽 | 『斜陽』 新潮文庫 |
86 | 真理 | 人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。 | 走れメロス | 『走れメロス』 新潮文庫 |
87 | 真理 | 真実は、行為だ。愛情も、行為だ。表現のない真実なんて、ありゃしない。 | 火の鳥 | 『新樹の言葉』 新潮文庫 |
88 | 真理 | 信実とは、決して空虚な妄想ではなかった | 走れメロス | 『走れメロス』 新潮文庫 |
89 | 真理 | 信じるところに現実はあるのであって、現実は決して人を信じさせる事が出来ない。 | 津軽 | 『津軽』 新潮文庫 |
90 | 真理 | 諸君が、もし恋人と逢って、逢ったとたんに、恋人がげらげら笑い出したら、慶祝である。必ず、恋人の非礼をとがめてはならぬ。恋人は、君に逢って、君の完全のたのもしさを、全身に浴びているのだ。 | 富嶽百景 | 『富嶽百景・走れメロス 他八篇』 岩波文庫 |
91 | 真理 | 事実は、小説よりも奇なり、と言う。しかし誰も見ていない事実だって世の中には、あるのだ。 | 一つの約束 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
92 | 真理 | 死と隣合せに生活している人には、生死の問題よりも、一輪の花の微笑が身に沁しみる。 | パンドラの匣 | 『パンドラの匣』 新潮文庫 |
93 | 真理 | 傑作も駄作もありやしません。人がいいと言えば、よくなるし、悪いと言えば、悪くなるんです。 | ヴィヨンの妻 | 『ヴィヨンの妻』 新潮文庫 |
94 | 真理 | 議論とは、往々にして妥協したい情熱である。 | かすかな声 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
95 | 真理 | だまされる人よりも、だます人のほうが数十倍苦しいさ。地獄に落ちるのだからね。 | かすかな声 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
96 | 真理 | 学問なんて、覚えると同時に忘れてしまってもいいものなんだ。けれども、全部忘れてしまっても、その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものだ。これだ。これが貴いのだ。勉強しなければいかん。 | 正義と微笑 | 『正義と微笑』 SDP Bunko |
97 | 真理 | お酒飲みというものは、よそのものたちが酔っているのを見ても、一種のよろこばしさを覚えるものらしい。 | 「お伽草紙」瘤取り | 『お伽草紙・新釈諸国噺』 岩波文庫 |
98 | 真理 | 【若い女の欠点】 個性の無いこと。深味が無い。理想の無いこと。批判はあっても、自分の生活に直接むすびつける積極性の無いこと。無反省。本当の自覚、自愛、自重がない。本当の意味の謙遜がない。独創性にとぼしい。お上品ぶっていながら、気品がない。 | 女生徒 | 『走れメロス』 新潮文庫 |
99 | 真理 | 悲しみは、金を出しても買え、という言葉が在る。青空は牢屋の窓から見た時に最も美しい、とか。 | 善蔵を思う | 『きりぎりす』 新潮文庫 |
100 | 真理 | 和というのは、ただ仲よく遊ぶという意味のものでは無い。互いに励まし合って勉強する事、之を和と謂う。 | 惜別 | 『惜別』 新潮文庫 |
101 | 真理 | 青春は人生の花だというが、また一面、焦燥、孤独の地獄である。どうしていいか、わからないのである。苦しいにちがいない。 | 困惑の弁 | 『太宰治全集 10』 ちくま文庫 |
102 | 真理 | 民主主義の本質は、それは人によっていろいろに言えるだろうが、私は、「人間は人間に服従しない」あるいは、「人間は人間を征服出来ない、つまり、家来にすることが出来ない」それが民主主義の発祥の思想だと考えている。 | 如是我聞 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
103 | 真理 | 真の思想は、叡智よりも勇気を必要とするものです。 | トカトントン | 『ヴィヨンの妻』 新潮文庫 |
104 | 真理 | 文明というのは、生活様式をハイカラにする事ではありません。つねに眼がさめている事が、文明の本質です。偽善を勘で見抜く事です。この見抜く力を持っている人のことを、教養人と呼ぶのではないでしょうか。 | 惜別 | 『惜別』 新潮文庫 |
105 | 真理 | 私は断言する。真の芸術家は醜いものだ。 | 十五年間 | 『グッド・バイ』 新潮文庫 |
106 | 真理 | 芸術家は、めったに泣かないけれども、ひそかに心臓を破って居ります。人の悲劇を目前にして、目が、耳が、手が冷いけれども、胸中の血は、再び旧にかえらぬ程に激しく騒いでいます。 | 女の決闘 | 『新ハムレット』 新潮文庫 |
107 | 真理 | 女ひとりの仕合せのために、男の人を利用するなんて、もったいないわ。女だって、弱いけれど、男は、もっと弱いのよ。 | 火の鳥 | 『新樹の言葉』 新潮文庫 |
108 | 真理 | 実に女性というものには、底の知れないおそろしいところがあるとつくづく感じ入りましたのでございます。 | 男女同権 | 『グッド・バイ』 新潮文庫 |
109 | 真理 | 馬子にも衣裳というが、ことに女は、その装い一つで、何が何やらわけのわからぬくらいに変る。元来、化け物なのかも知れない。 | グッド・バイ | 『グッド・バイ』 新潮文庫 |
110 | 真理 | 十二、三歳の少女の話を、まじめに聞ける人、ひとりまえの男というべし。 | HUMAN LOST | 『二十世紀旗手』 新潮文庫 |
111 | 真理 | 友情。信頼。私は、それを「徒党」の中に見たことが無い。 | 徒党について | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
112 | 真理 | 人間のもっとも悲痛の表情は涙でもなければ白髪でもなし、まして、眉間の皺ではない。最も苦悩の大いなる場合、人は、だまって微笑んでいるものである。 | 狂言の神 | 『二十世紀旗手』 新潮文庫 |
113 | 真理 | 僕たち男類が聞いて、およそ世につまらないものは、女類同志の会話だからね。 | 女類 | 『グッド・バイ』 新潮文庫 |
114 | 真理 | 女が、お茶碗や、きれいな柄の着物を愛するのは、それだけが、ほんとうの生き甲斐だからでございます。 | 皮膚と心 | 『きりぎりす』 新潮文庫 |
115 | 真理 | 洋の東西を問わず、また信仰の対象の何たるかを問わず、義の世界は、哀しいものである。 | 父 | 『ヴィヨンの妻』 新潮文庫 |
116 | 真理 | ジャーナリストは、人に革命やら破壊やらをそそのかして置きながら、いつも自分はするりとそこから逃げて汗などを拭いている。実に奇怪な生き物である。現代の悪魔である。 | おさん | 『ヴィヨンの妻』 新潮文庫 |
117 | 真理 | 科学の基礎をなすものは、物理界においても、化学界においても、すべて仮説だ。肉眼で見とどける事の出来ない仮説から出発している。この仮説を信仰するところから、すべての科学が発生するのだ。 | パンドラの匣 | 『パンドラの匣』 新潮文庫 |
118 | 真理 | 壇くん。 二三人の男と通じた女は、こりゃ、ひどい。穢いもんだ。 だけど千人と通じた女は、こりゃ、君、処女より純潔なもんだ | 小説 太宰治 | 檀一雄『小説 太宰治』 P+D BOOKS |
119 | 真理 | 文化と書いて、それに 私は優という字を考えます。 (中略) 人を憂える、ひとの寂しさわびしさ、つらさに敏感なこと、これが優しさであり、また人間としていちばん優れていることじゃないかしら、そうして、そんな、やさしい人の表情は、いつでも | 河盛好蔵宛書簡 1946(昭和21)年04月30日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
120 | 真理 | ゆるさるることの少き者は、その愛することもまた少し。 ルカ七ノ四七、キリストが酒飲みで、そうして、そのゆえに、道学者から非難されているということが、聖書にありますけどご存知ですか? はっきり書いています。 | 河盛好蔵宛書簡 1946(昭和21)年04月30日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
121 | 生活 | ここで犬死にしてはつまらない。逃げられるだけは逃げましょうよ。 | 貨幣 | 『地図』 新潮文庫 |
122 | 生活 | 死のうと思っていた。ことしの正月、よそから着物を一反もらった。お年玉としてである。着物の布地は麻であった。鼠色の細かい縞目が織り込められていた。これは夏に着る着物であろう。夏まで生きていようと思った。 | 葉 | 『晩年』 新潮文庫 |
123 | 生活 | 生活。 よい仕事をしたあとで 一杯のお茶をすする お茶のあぶくに きれいな私の顔が いくつもいくつも うつっているのさ どうにか、なる。 | 葉 | 『晩年』 新潮文庫 |
124 | 生活 | すべての思念にまとまりをつけなければ生きて行けない、そんなけちな根性をいったい誰から教わった? | 道化の華 | 『晩年』 新潮文庫 |
125 | 生活 | 「生活とは何ですか。」 「わびしさを堪える事です。」 | かすかな声 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
126 | 生活 | 一時の恥を、しのんで下さい。十度の恥を、しのんで下さい。もう、三年のいのち、保っていて下さい。われらこそ、光の子に、なり得る、しかも、すべて、あなたへの愛のため。 | HUMAN LOST | 『二十世紀旗手』 新潮文庫 |
127 | 生活 | おまえの寂しさは、わかっている。けれども、そんなにいつも不機嫌な顔をしていては、いけない。 | 駈込み訴え | 『走れメロス』 新潮文庫 |
128 | 生活 | 誰だって、みんな、深い傷を背負って、そ知らぬふりして生きているのだ。 | 火の鳥 | 『新樹の言葉』 新潮文庫 |
129 | 生活 | 知らん振りして、信じて、しばらく努力を続けて行こうではないか。 | 津軽 | 『津軽』 新潮文庫 |
130 | 生活 | 純粋を追うて、窒息するよりは、私は濁っても大きくなりたいのである。いまは、そう思っている。なんのことは、ない、一言で言える。負けたくないのである。 | 懶惰の歌留多 | 『女性作家が選ぶ太宰治』 講談社文芸文庫 |
131 | 生活 | 私はなんにも知りません。しかし、伸びて行く方向に陽が当たるようです。 | パンドラの匣 | 『パンドラの匣』 新潮文庫 |
132 | 生活 | 一日一日を、たっぷりと生きて行くより他は無い。明日のことを思い煩うな。明日は明日みずから思い煩わん。きょう一日を、よろこび、努め、人には優しくして暮したい。 | 新郎 | 『ろまん燈籠』 新潮文庫 |
133 | 生活 | トランプの遊びのように、マイナスを全部あつめるとプラスに変わるという事は、この世の道徳には起こり得ない事でしょうか。 | ヴィヨンの妻 | 『ヴィヨンの妻』 新潮文庫 |
134 | 生活 | 生きるという事は、たいへんな事だ。あちこちから鎖がからまっていて、少しでも動くと、血が噴き出す。 | 桜桃 | 『桜桃』 280円文庫 |
135 | 生活 | 人生、それはわからん。しかし、世の中は、色と慾さ | トカトントン | 『ヴィヨンの妻』 新潮文庫 |
136 | 生活 | ああ、人間は、ものを食べなければ生きて居られないとは、何という不体裁な事でしょう。 | たずねびと | 『グッド・バイ』 新潮文庫 |
137 | 生活 | いいかい。侘びしさに、負けてはいけない。それが、第一の心掛けだと、僕は思う。 | 当選の日 | 『太宰治全集 11 随想』 筑摩書房 |
138 | 生活 | 僕がね、絶対、確信を持てるのは味の素だけなんだ | 小説 太宰治 | 檀一雄『小説 太宰治』 P+D BOOKS |
139 | 生活 | 私は よい人間です。しつかりして居りますが、いままで運がわるくて、死ぬ一歩手前まで来てしまひました。芥川賞をもらへば、私は人の情けに泣くでせう。 (中略) 佐藤さんは私を助けることができます。私をきらはないで下さい。 | 佐藤春夫宛書簡 1936(昭和11)年02月05日 | 新潮文学アルバム 太宰治 |
140 | 生活 | お互いさまのことで、私も毎日、おもしろくなく暮らしています。 おもしろくない人が何万人もいる。みんな集まって座談会でもひらいて、なぐさめ合う。だらしがないことです。ミゼラブルでさえある。けれども、しょうがない。 | 中村貞次郎宛書簡 1934(昭和09)年11月02日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
141 | 生活 | 先夜は、やられました。 日暮里で一やすみ、巣鴨で下車して一やすみ、亀井は吐き、私は眠り、ともにまたはげましあって、やっと新宿から電車に乗り、こんどは私は電車の窓から吐き、亀井は少し正気づき、私は正気を失い、とうとう亀井に背負われるような形で三鷹の家へ送りとどけられました。 | 山岸外史宛書簡 1940(昭和15)年12月12日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
142 | 生活 | どうしておりますか。毎日、すこしずつでも書いておりますか。君自身を大事にしてください。 信じて、 成功しなければならぬ。 べつに三鷹へ、わざわざ来なくてもいいから、すこしずつでも書きすすめていてください。 | 小山清宛書簡 1941(昭和16)年12月02日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
143 | 生活 | 心細いお手紙いただきました。 生きてある者には、詩作する権利があります。 空飛ぶ鳥を見よ、 蒔かず、 刈らず、 倉に収めず。 野の百合はいかにして 育つかを思え、 みずから労せず、 紡がざるなり。 ご自愛を祈る。 | 菊田義孝宛書簡 1941(昭和16)年12月04日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
144 | 生活 | 中畑氏は自由経済になったので、少しく元気が出て、やみたばこ、やみウイスキーなど、太宰先生に補給しています。中畑さんのウイスキーは、なかなか高い。 しかし、中畑さんの言によれば、太宰先生のために八方奔走してやっと入手するのだそうです。私は大いに感謝の意を表して、郵便局に貯金をおろしに走ります。 | 井伏鱒二宛書簡 1945(昭和20)年11月23日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
145 | 生活 | 出版景気といっても、景気にはこれまでいつもだまされてきましたし、とにもかくにも、私はヒカン論一点張り。 ただもう酒を飲んで俗物どもを罵倒したい気持ちでいっぱい。 | 井伏鱒二宛書簡 1945(昭和20)年11月28日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
146 | 生活 | しかし、東京も、このごろ急にまた食料危機とやらになったとか、それも憂鬱で、上京の志を放棄しました。 (中略) どうも、たべなければ生きていけないというのは、はなはだ不面目な話ですが、どうも、こればっかりは。じつに苦笑です。 | 井伏鱒二宛書簡 1946(昭和21)年05月01日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
147 | 自己 | 撰ばれてあることの 恍惚と不安と 二つわれにあり | 葉 | 『晩年』 新潮文庫 |
148 | 自己 | 芸術家というものは、つくづく困った種族である。鳥籠一つを、必死にかかえて、うろうろしている。その鳥籠を取り上げられたら、彼は舌を噛んで死ぬだろう。なるべくなら、取り上げないで、ほしいのである。 | 一燈 | 『津軽通信』 新潮文庫 |
149 | 自己 | 私の欲していたもの、全世界ではなかった。百年の名声でもなかった。タンポポの花一輪の信頼が欲しくて、チサの葉一枚のなぐさめが欲しくて、一生を棒に振った。 | 二十世紀旗手 | 『二十世紀旗手』 新潮文庫 |
150 | 自己 | 生くることにも心せき、感ずることも急がるる。 | 懶惰の歌留多 | 『新樹の言葉』 新潮文庫 |
151 | 自己 | 憎まれて憎まれて強くなる。 | 懶惰の歌留多 | 『新樹の言葉』 新潮文庫 |
152 | 自己 | われ山にむかいて眼を挙ぐ。 | 懶惰の歌留多 | 『新樹の言葉』 新潮文庫 |
153 | 自己 | 自己弁解は、敗北の前兆である。いや、すでに敗北の姿である。 | かすかな声 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
154 | 自己 | 駄目な男というものは幸福を受け取るに当たってさえ下手くそを極めるものである。 | 「新釈諸国噺」貧の意地 | 『お伽草紙・新釈諸国噺』 岩波文庫 |
155 | 自己 | 見よ、前方に平和の図がある。お慶親子三人、のどかに海に石の投げっこしては笑い興じている。声がここまで聞えて来る。 (中略) 負けた。これは、いいことだ。そうなければ、いけないのだ。かれらの勝利は、また私のあすの出発にも、光を与える。 | 黄金風景 | 『きりぎりす』 新潮文庫 |
156 | 自己 | 皆は、私を、先生、と呼んだ。私はまじめにそれを受けた。私には、誇るべき何もない。学問もない。才能もない。肉体よごれて、心もまづしい。けれども、苦悩だけは、その青年たちに、先生、と言われて、だまってそれを受けていいくらいの、苦悩は、経て来た。たったそれだけ。藁一すじの自負である。 | 富嶽百景 | 『走れメロス』 新潮文庫 |
157 | 自己 | 人間のプライドの究極の立脚点は、あれにも、これにも死ぬほど苦しんだ事があります、と言い切れる自覚ではないか。 | 東京八景 | 『走れメロス』 新潮文庫 |
158 | 自己 | 肉親を書いて、そうしてその原稿を売らなければ生きて行けないという悪い宿業を背負っている男は、神様から、そのふるさとを取りあげられる。 | 津軽 | 『津軽』 新潮文庫 |
159 | 自己 | 人間は、みな、同じものだ。 これは、いったい、思想でしょうか。僕はこの不思議な言葉を発明したひとは、宗教家でも哲学者でも芸術家でも無いように思います。 | 斜陽--直治の遺書 | 『斜陽』 新潮文庫 |
160 | 自己 | 僕は、流れる水だ。ことごとくの岸を撫でて流れる。 僕はみんなを愛している。きざかね。 | パンドラの匣 | 『パンドラの匣』 新潮文庫 |
161 | 自己 | 私は、嘘ばかりついている。けれども、一度だって君を欺いたことが無い。 | 善蔵を思う | 『きりぎりす』 新潮文庫 |
162 | 自己 | 人から尊敬されようと思わぬ人たちと遊びたい。 けれども、そんないい人たちは、僕と遊んでくれやしない。 | 斜陽 | 『斜陽』 新潮文庫 |
163 | 自己 | 子供より親が大事、と思いたい。子供のために、などと古風な道学者みたいな事を殊勝らしく考えてみても、何、子供よりも、その親のほうが弱いのだ。 | 桜桃 | 『桜桃』 280円文庫 |
164 | 自己 | 弱虫は、幸福をさえおそれるものです。綿で怪我するんです。幸福に傷つけられる事もあるんです。 | 人間失格 | 『人間失格』 新潮文庫 |
165 | 自己 | ただ、世の中にのみ眼をむけよ。自然の風景に惑溺して居る我の姿を、自覚したるときには、「われ老憊したり。」と素直に、敗北の告白をこそせよ。 | もの思う葦 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
166 | 自己 | 自分には幸福も不幸もありません。ただ、一切は過ぎて行きます。自分が今まで阿鼻叫喚で生きて来た所謂『人間』の世界に於いて、たった一つ、真理らしく思はれたは、それだけでした。ただ、一さいは過ぎて行きます。 | 人間失格 | 『人間失格』 新潮文庫 |
167 | 自己 | 私には思想なんてものはありませんよ。すき、きらいだけですよ。 | 苦悩の年鑑 | 『グッド・バイ』 新潮文庫 |
168 | 自己 | 自分の苦悩に狂いすぎて、他の人もまた精一ぱいで生きているのだという当然の事実に気附かなかった。 | 東京八景 | 『走れメロス』 新潮文庫 |
169 | 自己 | 私は神も鬼も信じていない。人間だけを信じている。 | もの思う葦 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
170 | 自己 | 私は自身を滅亡する人種だと思っていた。私の世界観がそう教えたのだ。強烈なアンチテエゼを試みた。滅亡するものの悪をエムファサイズしてみせればみせるほど、次に生れる健康の光のばねも、それだけ強くはねかえって来る、それを信じていたのだ。 | 姥捨 | 『きりぎりす』 新潮文庫 |
171 | 自己 | 人間はみな同じものだ。そういう思想はただ人を自殺にかり立てるだけのものではないでしょうか。 | わが半生を語る | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
172 | 自己 | 自分の醜態を意識してつらい時には、聖書の他には、どんな書物も読めなくなりますね。そうして聖書の小さい活字の一つ一つだけが、それこそ宝石のようにきらきら光って来るから不思議です。 | 風の便り | 『きりぎりす』 新潮文庫 |
173 | 自己 | 私は一種の理想主義者かも知れない。理想主義者は、悲しい哉、現世に於いてその言動、やや不審、滑稽の感をさえ隣人たちに与えている場合が、多いようである。 | デカダン抗議 | 『津軽通信』 新潮文庫 |
174 | 自己 | いまは自分には、幸福も不幸もありません。 ただ、一さいは過ぎて行きます。 自分がいままで阿鼻叫喚で生きて来た所謂「人間」の世界に於いて、たった一つ、真理らしく思われたのは、それだけでした。 | 人間失格 | 『人間失格』 新潮文庫 |
175 | 自己 | 作家はみんなこういうものであろうか。告白するのにも言葉を飾る。僕はひとでなしでなかろうか。ほんとうの人間らしい生活が、僕にできるかしら。こう書きつつも僕は僕の文章を気にしている。 | 道化の華 | 『晩年』 新潮文庫 |
176 | 自己 | 歯が、ぼろぼろに欠け、背中は曲がり、ぜんそくに苦しみながらも、小暗い露地で、一生懸命ヴァイオリンを奏している、かの見るかげもない老爺の辻音楽師を、諸君は、笑うことができるであろうか。私は、自身を、それに近いと思っている。 | 鴎 | 『きりぎりす』 新潮文庫 |
177 | 自己 | (包茎の)原因は、僕は例の過度のアンマじゃないかと思うんだ | 小説 太宰治 | 檀一雄『小説 太宰治』 P+D BOOKS |
178 | 自己 | どうか、むりでも、ほがらかに、私をからかって下さい。私はけっしてお調子に乗るようなことございませんから。井伏さんが、憂うつなお顔をして居られると、私は、実際しょげて、くるしくてなりません。 | 井伏鱒二宛書簡 1938(昭和13)年10月25日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
179 | 自己 | 私は、好きな男であればあるほど、じゃらじゃら馴れあうのがきらいです。あなたも、そうであろう。 お互い、男だ。 | 酒井真人宛書簡 1935(昭和10)年10月(日付不詳) | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
180 | 自己 | 私、世の中を、いや、四五の仲間をにぎやかにはでにするために、しし食ったふりをして、そうして、しし食ったむくい、苛烈のむくい受けています。食わなかったししのために。 | 井伏鱒二宛書簡 1936(昭和11)年09月19日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
181 | 自己 | 12日に退院いたしました。脳病院ひとつき間の「人間倉庫」の中のここちについては、いまは、申しあげませぬ。 (中略) ことわる決心いたしましたが、この世への愛のため、われより若き弱き者への愛のため、奮起した。ご信用ください。 | 鰭崎潤宛書簡 1936(昭和11)年11月26日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
182 | 自己 | いま最も勇気のある態度は保守だと思います。 (中略) 私は、こんどは社会主義者どもと、戦うつもり。まさか | 小田嶽夫宛書簡 1946(昭和21)年01月28日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
183 | 処世 | ほんとうに、言葉は短いほどよい。それだけで、信じさせることができるならば | 葉 | 『晩年』 新潮文庫 |
184 | 処世 | 良き師持ちたるこの身の幸福を、すこしも早う、いちぶいちりんあやまちなく、はっきり、お教へしなければならぬ、たのしき義務をさへ感じました。 (中略) ああ、私は、甘えることと毆ることと、二つの生きかたしか知らぬ男だ。 | 先生三人 | 『太宰治全集 10』 ちくま文庫 |
185 | 処世 | 大人というものは侘しいものだ。愛し合っていても、用心して、他人行儀を守らなければならぬ。 | 津軽 | 『津軽』 新潮文庫 |
186 | 処世 | 善をなす場合には、いつも詫びながらしなければいけない。善ほど他人を傷つけるものはないのだから。 | 美男子と煙草 | 『人間失格 グッド・バイ 他一篇』 岩波文庫 |
187 | 処世 | 友人がみな怠けて遊んでいる時、自分ひとりだけ勉強するのは、てれくさくて、おそろしくて、とてもだめだから、ちっとも遊びたくなくても、自分も仲間入りして遊ぶ | 斜陽--直治の遺書 | 『斜陽』 新潮文庫 |
188 | 処世 | 生活人の強さというのは、はっきりノオと言える勇気ですね。 | 未帰還の友に | 『津軽通信』 新潮文庫 |
189 | 処世 | 世の中から変人とか奇人などといわれている人間は、案外気の弱い度胸のない、そういう人が自分を護るための擬装をしているのが多いのではないかと思われます。やはり生活に対して自信のなさから出ているのではないでしょうか。 | わが半生を語る | 『太宰治全集 10』 ちくま文庫 |
190 | 処世 | 叔母の言う。 「お前はきりょうがわるいから、愛嬌だけでもよくなさい。お前はからだが弱いから、心だけでもよくなさい。お前は嘘がうまいから、行いだけでもよくなさい」 | 葉 | 『晩年』 新潮文庫 |
191 | 処世 | 次々と思い出が蘇る。井伏さんは時々おっしゃる。 「人間は、一緒に旅行をすると、その旅の道連れの本性がよくわかる。」 | 『井伏鱒二選集』後記 | 『もの思う葦』新潮文庫 |
192 | 処世 | 好奇心を爆発させるのも冒険、また、好奇心を抑制するのも、やっぱり冒険、どちらも危険さ。人には、宿命というものがあるんだよ。 | 「お伽草紙」浦島さん | 『お伽草紙』 新潮文庫 |
193 | 処世 | 一ばんきらいなものは、人を疑う事と、それから、嘘をつく事だ。 | 走れメロス | 『走れメロス』 新潮文庫 |
194 | 処世 | まじめに努力して行くだけだ。これからは、単純に、正直に行動しよう。知らない事は、知らないと言おう。出来ない事は、出来ないと言おう。思わせ振りを捨てたならば、人生は、意外にも平坦なところらしい。 | 正義と微笑 | 『正義と微笑』 SDP Bunko |
195 | 処世 | 神は、在る。きっと在る。人間到るところ青山。見るべし、無抵抗主義の成果を。私は自分を、幸福な男だと思った。 | 善蔵を思う | 『きりぎりす』 新潮文庫 |
196 | 処世 | とにかくね、生きているのだからね、インチキをやっているに違いないのさ。 | 斜陽 | 『斜陽』 新潮文庫 |
197 | 処世 | どうも、陸上の生活は騒がしい。お互い批評が多すぎるよ。陸上生活の会話の全部が、人の悪口か、でなければ自分の広告だ。うんざりするよ。 | 「お伽草紙」浦島さん | 『お伽草紙』 新潮文庫 |
198 | 処世 | 甘さを軽蔑する事くらい容易な業は無い。そうして人は、案外、甘さの中に生きている。他人の甘さを嘲笑しながら、自分の甘さを美徳のように考えたがる。 | かすかな声 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
199 | 処世 | 私は、人間をきらいです。いいえ、こわいのです。 | 待つ | 『新ハムレット』 新潮文庫 |
200 | 処世 | それは世間が、ゆるさない 世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう? そんな事をすると、世間からひどいめに逢うぞ 世間じゃない。あなたでしょう? いまに世間から葬られる 世間じゃない。葬むるのは、あなたでしょう? | 人間失格 | 『人間失格』 新潮文庫 |
201 | 処世 | おれだって、弱い心を持っている。お前にまきこまれて、つい人の品評をしたくなる。(中略)お前たちには、ひとの悪いところばかり眼について、自分自身のおそろしさにまるで気がついていないのだからな。おれは、ひとがこわい。 | 「お伽草紙」舌切雀 | 『お伽草紙』 新潮文庫 |
202 | 処世 | 君について、うんざりしていることは、もう一つある。それは芥川の苦悩がまるで解っていないことである。 日蔭者の苦悶。 弱さ。 聖書。 生活の恐怖。 敗者の祈り。 | 如是我聞 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
203 | 処世 | にこにこ笑っている私を、太宰ぼけたな、と囁いている友人もあるようだ。それは間違いないのだ、呆けたのだ、けれども、――と言いかけて、あとは言わぬ。ただ、これだけは信じたまえ。「私は君を、裏切ることは無い。」 | 鴎 | 『きりぎりす』 新潮文庫 |
204 | 処世 | そうだ! 僕はやるぞ。なにも宿命だ。いやな仲間もまた一興じゃないか。 | ダス・ゲマイネ | 『走れメロス』 新潮文庫 |
205 | 処世 | これまでの自分の恐怖感は、春の風には 謂わば「科学の迷信」におびやかされていたようなものなのでした。 | 人間失格 | 『人間失格』 新潮文庫 |
206 | 処世 | たしかに何十万もの | 人間失格 | 『人間失格』 新潮文庫 |
207 | 処世 | お弁当箱に食べ残しのごはん三粒、千万人が一日に三粒ずつ食べ残しても既にそれは、米何俵をむだに捨てた事になる、(中略)などという「科学的統計」に、自分は、どれだけおびやかされ(中略)、それを全く現実として受取り、恐怖していた昨日までの自分をいとおしく思い、笑いたく思ったくらいに、自分は、世の中というものの実体を少しずつ知って来たというわけなのでした。 | 人間失格 | 『人間失格』 新潮文庫 |
208 | 処世 | 苦しむものは苦しめ。落ちるものは落ちよ。私に関係したことではない。それが世の中だ。 | 富嶽百景 | 『走れメロス』 新潮文庫 |
209 | 処世 | 人間なんて、そんなにたくさん、あれもこれも、できるものじゃないのだ。しのんで、しのんで、つつましくやってさえ行けば、渡る世間に鬼はない。 | 火の鳥 | 『新樹の言葉』 新潮文庫 |
210 | 処世 | もっと気弱くなれ! 偉いのはお前じゃないんだ! 学問なんて、そんなものは捨てちまえ! | 十五年間 | 『グッド・バイ』 新潮文庫 |
211 | 処世 | ゆきあたりばったりの万人を、ことごとく愛しているということは、誰をも、愛していないということだ。 | 秋風記 | 『新樹の言葉』 新潮文庫 |
212 | 処世 | 嘘をつかない人なんて、あるかしら。あったら、その人は、永遠に敗北者だ。 | 女生徒 | 『走れメロス』 新潮文庫 |
213 | 処世 | 私にとって(ほかの人は、どうだか知らない)最も苦痛なのは、「徒党」の一味の馬鹿らしいものを馬鹿らしいとも言えず、かえって称賛を送らなければならぬ義務の負担である。 | 徒党について | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
214 | 処世 | 節度を保つこと。節度を保つこと。 | もの思う葦 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
215 | 処世 | 危局突破を祈る。 あせっては、いけない。まず、しずかに横臥がいちばん。 | 田中英光宛書簡 1947(昭和22)年04月02日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
216 | 処世 | 実に無神経な顔をしているじゃあないか。 あるのは、己惚れだけだね。 どだい、芸術家の顔じゃあないね。 クラス中の嫌われ者だったにちがいないね | 志賀直哉の口絵写真を観て | 山口智司編集『肉声 太宰治』 |
217 | 処世 | 語学だけはしっかりやっておいたほうがいいんじゃないかね。 大学の文学部なんて、語学だけ教えてりゃいいんだ。もっとも、 俺も帝大の仏文科というところに籍をおいたが、ついにフランス語を知らずにおわったがね。 | 東京帝大独文科一年生 野原一夫への言葉 | 野原一夫『回想 太宰治』 新潮文庫 |
218 | 処世 | ビールは、ぐーっと一息にかぎる。 ちびちび、舐めるように飲んでるヤツがいるけど、気味が悪いね。 しかし、ビールなんて、うまいもんじゃないねえ。 | 東京帝大独文科一年生 野原一夫への言葉 | 野原一夫『回想 太宰治』 新潮文庫 |
219 | 処世 | ジャーナリズムの軽佻浮薄には呆れ果てた。きのうまで日の丸を振っていたと思ったら、きょうはもう赤旗だ。 冗談かと思ったら、これが大真面目なのだからオドロくね。 進歩的文化人とかいう輩は、あれは何ですか。 | 神楽坂のうなぎ屋にて | 野原一夫『回想 太宰治』 新潮文庫 |
220 | 処世 | 文化と書いて、それにハニカミとルビを振ったらと河盛さんは言ってらっしゃった、大賛成。 ハニカミ、 あの文化人どもには、ハニカミがまるでないじゃないか。 | 神楽坂のうなぎ屋にて | 野原一夫『回想 太宰治』 新潮文庫 |
221 | 処世 | 中原「何だ、おめえは。青鯖が空に浮んだような顔をしやがって。全体、おめえは何の花が好きだい?」 中原「ええ? 何だいおめえの好きな花は」 太宰「モ、モ、ノ、ハ、ナ」 同人誌『靑い花』発刊の頃(1934(昭和09)年)おでん屋「おかめ」(荻窪)にて | 小説 太宰治 | 檀一雄『小説 太宰治』 P+D BOOKS |
222 | 処世 | 私、ことばいうのがへたで、たいていけいべつされたり、いやがられたりして、誠実、文字どおり生命惜しからぬ誠実わかってくれませぬ。 学兄のご好意、いちばん、身にしみています。 | 楢崎勤宛書簡 1936(昭和11)年07月31日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
223 | 処世 | 目のまえで腹かき切って見せなければ、人々、私の誠実信じない。莞爾の微笑の似合う顔なのに、みな、よってたかってしかめつら、青くゆがんだ魔性のもの、そのマスク似合う、似合うと拍手喝采。 | 井伏鱒二宛書簡 1936(昭和11)年09月15日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
224 | 処世 | 幸福は一夜おくれて来る。 おそろしきはおだてに乗らなぬ男。飾らぬ女。雨のちまた。私の悪いとこは「現状よりも誇張して悲鳴あげる。」とある人申しました。苦悩高いほど尊いなどまちがいと存じます。 | 井伏鱒二宛書簡 1936(昭和11)年09月19日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
225 | 処世 | 信じてください。 自殺して、『それくらいのことだったら、なんとかちょっと耳打ちしてくれたら、』という、あの残念のこしたくなく、そのちょっと耳打ちのことば、 このごろの私のことばはすべてそのつもりなのでございます。 | 井伏鱒二宛書簡 1936(昭和11)年09月19日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
226 | 処世 | 太宰も、このごろは、多少、 むかしのニヤケタ、ウソツキの太宰もなつかしいが、あれでは、生きてゆけません。 | 山岸外史宛書簡 1938(昭和13)年10月17日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
227 | 処世 | 私は、も少し偉くなりたい。少しずつ少しずつ、皆の信頼を回復し、りっぱな仕事していこうと努めているのです。 私は、自身を、そんなに、だめな男だとも思っていません。 | 中畑慶吉宛書簡 1938(昭和13)年10月26日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
228 | 処世 | お酒をのむと、私も、たいていあとで、わるかったかな? いけなかったかな? と考えます。お酒のむ人の通癖のようであります。 そこがまた、味なところなのかもしれません。 | 山岸外史宛書簡 1940(昭和15)年12月02日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
229 | 処世 | 雑誌からの注文もいろいろありますが、とても応じきれず、二つ三つ書いただけです。 いつの世もジャーナリズムの軽薄さにはあきれます。ドイツといえばドイツ、アメリカといえばアメリカ、何が何やら。 | 井伏鱒二宛書簡 1945(昭和20)年11月23日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
230 | 処世 | 共産主義も自由主義もへったくれもない、人間の欲張っているうちは、世の中はよくなりっこありませんよ、日本虚無派というのでも作りましょうか。 | 井伏鱒二宛書簡 1945(昭和20)年11月23日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
231 | 処世 | このごろの「文化人」どものばかさかげん、どうかしているんじゃないか? 目の色がかわっていますよ。 | 堤重久宛書簡 1946(昭和21)年04月22日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
232 | 処世 | 実はね、いろいろ、あぶねえんだよ。いちど会いたいと思っている。いろいろと人の悪口も言いたい。安心してそれを言える相手は、だれもいないんだよ。 みんな、イヤシクていけねえ。 | 堤重久宛書簡 1947(昭和22)年12月02日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
233 | 人生 | ひとこと口走ったが最後、この世の中から、完全に、葬り去られる。そんな胸の奥の奥にしまっている秘密を、君は、三つか四つ――筈である。 | 碧眼托鉢 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
234 | 人生 | 君は、今まで何も失敗してやしないじゃないか。駄目だかどうだか、自分で実際やってみて転倒して傷ついて、それからでなければ言えない言葉だ。何もしないさきから、僕は駄目だときめてしまうのは、それあ怠惰だ。 | みみずく通信 | 『ろまん燈籠』 新潮文庫 |
235 | 人生 | 中途で倒れるのは、はじめから何もしないのと同じ事だ。 | 走れメロス | 『走れメロス』 新潮文庫 |
236 | 人生 | 男には、不幸だけがあるんです。いつも恐怖と、戦ってばかりいるのです。 | ヴィヨンの妻 | 『ヴィヨンの妻』 新潮文庫 |
237 | 人生 | 友と友の間の信実は、この世で一ばん誇るべき宝なのだからな。 | 走れメロス | 『走れメロス』 新潮文庫 |
238 | 人生 | 大人とは、裏切られた青年の姿である。 | 津軽 | 『津軽』 新潮文庫 |
239 | 人生 | 怒る時に怒らなければ、人間の甲斐がありません。 | 駈込み訴え | 『走れメロス』 新潮文庫 |
240 | 人生 | 年月は、人間の救いである。 忘却は、人間の救いである。 | 「お伽草紙」浦島さん | 『お伽草紙』 新潮文庫 |
241 | 人生 | 即ち荒っぽい大きな歓楽を避けてさえいれば、自然また大きな悲哀もやって来ないのだ。 | 人間失格 | 『人間失格』 新潮文庫 |
242 | 人生 | 生きている事。ああ、それは、何というやりきれない息もたえだえの大事業であろうか。 | 斜陽 | 『斜陽』 新潮文庫 |
243 | 人生 | 世の中から、追い出されてもよし、いのちがけで事を行うは罪なりや。 私は、自分の利益のために書いているのではないのである。信ぜられないだろうな。 最後に問う。弱さ、苦悩は罪なりや。 | 如是我聞 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
244 | 人生 | 人生の出発は、つねにあまい。まず試みよ。破局の次にも、春は来る。桜の園を取りかへす術なきや。 | 花燭 | 『新樹の言葉』 新潮文庫 |
245 | 人生 | 人間三百六十五日、何の心配も無い日が、一日、いや半日あったら、それは仕合せな人間です。 | ヴィヨンの妻 | 『ヴィヨンの妻』 新潮文庫 |
246 | 人生 | 人間は不幸のどん底につき落とされ、ころげ廻りながらも、いつかしら一縷の希望の糸を手さぐりで捜し当てているものだ。 | パンドラの匣 | 『パンドラの匣』 新潮文庫 |
247 | 人生 | 人間は、自由に生きる権利を持っていると同時に、いつでも勝手に死ねる権利も持っているのだけれども、しかし、「母」の生きているあいだは、その死の権利は留保されなければならないと僕は考えているんです。 | 斜陽 | 『斜陽』 新潮文庫 |
248 | 人生 | 権威を以て命ずる。死ぬるばかり苦しき時には、汝の母に語れ。十たび語れ。千たび語れ。 | 思案の敗北 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
249 | 人生 | 人は、いつも、こう考えたり、そう思ったりして行路を選んでいるものでは無いからでもあろう。多くの場合、人はいつのまにか、ちがう野原を歩いている。 | 東京八景 | 『走れメロス』 新潮文庫 |
250 | 人生 | 人の心の転機は、ほかの人には勿論わからないし、また、その御本人にも、はっきりわかっていないものではなかろうか。多くの場合、人は、いつのまにやら自分の体内に異った血が流れているのに気附いて、愕然とするものではあるまいか。 | 惜別 | 『惜別』 新潮文庫 |
251 | 人生 | 信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。 | 走れメロス | 『走れメロス』 新潮文庫 |
252 | 人生 | 笑われて、笑われて、つよくなる。 | HUMAN LOST | 『二十世紀旗手』 新潮文庫 |
253 | 人生 | 若い時から名誉を守れ | 走れメロス | 『走れメロス』 新潮文庫 |
254 | 人生 | 嫉妬というものは、なんという救いのない狂乱。それも肉体だけの狂乱。一点美しいところもない醜怪きわめたものか。世の中には、まだまだ私の知らない、いやな地獄があったのですね。 | 皮膚と心 | 『30代作家が選ぶ太宰治』 講談社文芸文庫 |
255 | 人生 | 自分の運命を自分で規定しようとして失敗した。ふらふら帰宅すると、見知らぬ不思議な世界が開かれていた。Hは、玄関で私の背筋をそっと撫でた。他の人も皆、よかった、よかったと言って、私を、いたわってくれた。人生の優しさに私は呆然とした。 | 東京八景 | 『走れメロス』 新潮文庫 |
256 | 人生 | 人間には絶望という事はあり得ない。人間は、しばしば希望にあざむかれるが、しかし、また「絶望」という観念にも同様にあざむかれる事がある。 | パンドラの匣 | 『パンドラの匣』 新潮文庫 |
257 | 人生 | 私は、純粋というものにあこがれた。無報酬の行為。まったく利己の心のない生活。けれども、それは、至難の業であった。私はただ、やけ酒を飲むばかりであった。私の最も憎悪したものは、偽善であった。 | 苦悩の年鑑 | 『グッド・バイ』 新潮文庫 |
258 | 人生 | 幸福の便りというものは、待っている時には決して来ないものだ。 | 正義と微笑 | 『正義と微笑』 SDP Bunko |
259 | 人生 | 君は、だらしが無い。旅行をなさるそうですが、それもよかろう。君に今、一ばん欠けているものは、学問でもなければお金でもない。勇気です。 | 風の便り | 『きりぎりす』 新潮文庫 |
260 | 人生 | 君のような秀才にはわかるまいが、「自分の生きていることが、人に迷惑をかける。僕は余計者だ」という意識ほどつらい思いは世の中に無い。 | パンドラの匣 | 『パンドラの匣』 新潮文庫 |
261 | 人生 | 疑いながら、ためしに右へ曲るのも、信じて断乎として右へ曲るのも、その運命は同じ事です。どっちにしたって引き返すことは出来ないんだ。 | 「お伽草紙」浦島さん | 『お伽草紙』 新潮文庫 |
262 | 人生 | 眼鏡をとって人を見るのも好き。相手の顔が、皆、優しく、きれいに、笑って見える。 | 女生徒 | 『走れメロス』 新潮文庫 |
263 | 人生 | 過ぎ去ったことは、忘れろ。そういっても、無理かも知れぬが、しかし人間は、何か一つ触れてはならぬ深い傷を背負って、それでも、堪えて、そ知らぬふりして生きているのではないのか。 | 火の鳥 | 『新樹の言葉』 新潮文庫 |
264 | 人生 | 安楽なくらしをしているときは、絶望の詩を作り、ひしがれたくらしをしているときは、生のよろこびを書きつづる。 | 葉 | 『晩年』 新潮文庫 |
265 | 人生 | なぜか、涙が出た。しくしく嗚咽をはじめた。おれは、まだまだ子供だ。子供が、なんでこんな苦労をしなければならぬのか。 | 姥捨 | 『きりぎりす』 新潮文庫 |
266 | 人生 | じぶんで、したことは、そのように、はっきり言わなければ、かくめいも何も、おこなわれません。じぶんで、そうしても、他におこないをしたく思って、にんげんは、こうしなければならぬ、などとおっしゃっているうちは、にんげんの底からの革命が、いつまでも、できないのです。 | かくめい | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
267 | 人生 | このたびの戦争のために私もいろいろ人並の苦労は致しましたけれども、それでも、夫の優しさを思えば、この八年間、私は仕合せ者であったと言いたくなるのです。 | おさん | 太宰治小品選第3巻オーディオブックCD3枚組 |
268 | 人生 | 押せども、ひけども、うごかぬ扉が、この世の中にある。地獄の門をさえ冷然とくぐったダンテもこの扉については、語るを避けた。 | もの思う葦 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
269 | 人生 | くるしいだろうねぇ。けれども苦しいのは君だけじゃない。夕焼けの悲しさは、僕にだってよくわかる、けれども、こらえて生きていこう | 新ハムレット | 『新ハムレット』 新潮文庫 |
270 | 人生 | 実行しないで、ただ、あこがれて溜息をついているのが風流人ですか。いやらしいものだ。 | 「お伽草紙」浦島さん | 『お伽草紙』 新潮文庫 |
271 | 人生 | 「女には、幸福も不幸も無いものです」 「そうなの? そう言われると、そんな気もして来るけど、それじゃ、男の人は、どうなの?」 「男には、不幸だけがあるんです。いつも恐怖と、戦ってばかりいるのです」 | ヴィヨンの妻 | 『ヴィヨンの妻』 新潮文庫 |
272 | 人生 | 炉辺の幸福。どうして私には、それが出来ないのだろう。とても、いたたまらない気がするのである。炉辺が、こわくてならぬのである。 | 父 | 『ヴィヨンの妻』 新潮文庫 |
273 | 人生 | 人生とは、(私は確信を以て、それだけは言えるのであるが、苦しい場所である。生れて来たのが不幸の始まりである。)ただ、人と争うことであって、その暇々に、私たちは、何かおいしいものを食べなければいけないのである。 | 如是我聞 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
274 | 人生 | ああ、人間は、お互い何も相手をわからない、まるっきり間違って見ていながら、無二の親友のつもりでいて、一生、それに気附かず、相手が死ねば、泣いて弔詞なんかを読んでいるのではないでしょうか。 | 人間失格 | 『人間失格』 新潮文庫 |
275 | 人生 | いまの世の人、やさしき一語に飢えて居る。ことにも異性のやさしき一語に。 | 創生記 | 『二十世紀旗手』 新潮文庫 |
276 | 人生 | 自愛。人間これを忘れてはいかん。結局、たよるものは、この気持ひとつだ。 | 新樹の言葉 | 『新樹の言葉』 新潮文庫 |
277 | 人生 | 男にしなだれかかって仕合せにしてもらおうと思っているのが、そもそも間違いなんです。虫が、よすぎるわよ。男には、別に、男の仕事というものがあるのでございますから、その一生の事業を尊敬しなければいけません。 | 火の鳥 | 『新樹の言葉』 新潮文庫 |
278 | 人生 | 人間はいつか必ず死ぬものです、自分の好きな路に進んで、努力してそうして中途でたおれたとて、僕は本望です | 日の出前 | 『きりぎりす』 新潮文庫 |
279 | 人生 | なぜ生きていなければいけないのか、その問に思い悩んで居るうちは、私たち、朝の光を見ることが、出来ませぬ。 | 古典風 | 『新ハムレット』 新潮文庫 |
280 | 人生 | なぜ私たちは、自分だけで満足し、自分だけを一生愛して行けないのだろう。 | 女生徒 | 『走れメロス』 新潮文庫 |
281 | 人生 | あ、ああ君も、お前も、キサマも、俺がこんなに苦しんでいるのにシャアシャアとして生きていやがる。 | 虚構の春 | 『二十世紀旗手』 新潮文庫 |
282 | 人生 | みれん。これは、いやらしいことだ。世の中で、いちばんだらしないことだ。 | 姥捨 | 『きりぎりす』 新潮文庫 |
283 | 人生 | いかに才能が豊富でも、人間には誠実がなければ、何事に於いても成功しない | 千代女 | 『きりぎりす』 新潮文庫 |
284 | 人生 | 人生には、最後の褒め役が一人いなければならん。 | 新ハムレット | 『新ハムレット』 新潮文庫 |
285 | 人生 | 私は君を一度あざむきしに、君は、私を千度あざむいていた。私は、「嘘吐き」と呼ばれ、君は、「苦労人。」と呼ばれた。「うんとひどい嘘、たくさん吐くほど、嘘つきでなくなるらしいのね?」 | HUMAN LOST | 『二十世紀旗手』 新潮文庫 |
286 | 人生 | レヤチーズは、自由にやって行っていいのです。ただ一つ、わしが心配して気をもんでいるのだという事実だけを、知ってもらえたらいいのです。それを覚えている限り、あれは決して堕落しません。 | 新ハムレット | 『新ハムレット』 新潮文庫 |
287 | 人生 | 私は港の息づまるような澱んだ空気に堪え切れなくて、港の外は嵐であっても、帆をあげたいのです。憩える帆は、例外なく汚い。私を嘲笑する人たちは、きっとみな、憩える帆です。何も出来やしないんです。 | 斜陽 | 『斜陽』 新潮文庫 |
288 | 人生 | 無性格、よし。卑屈、結構。女性的、そうか。復習心、よし。お調子もの、またよし。怠惰、よし。変人、よし。化物、よし。古典的秩序へのあこがれやら、訣別やら、何もかも、みんなもらって、ひっくるめて、そのまま歩く。そこに生長がある。ここに発展の路がある。 | 一日の労苦 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
289 | 人生 | ああ、生きて行くという事は、いやな事だ。殊にも、男は、つらくて、哀しいものだ。とにかく、何でもたたかって、そうして、 | 美男子と煙草 | 『グッド・バイ』 新潮文庫 |
290 | 人生 | ただいま懸命に再出発の準備して居ります 無慾 叡智 意思 この三つに就いて多少思ひ当たるところあるのです | 亀井勝一郎宛書簡・1938(昭和13)年04月20日 | 山口智司編集『肉声 太宰治』 |
291 | 人生 | 必要なものは、叡智でもなかった。思索でもなかった。学究でもなかった。ポーズでもなかった。愛情だ。蒼空よりも深い愛情だ。 | 今官一宛書簡 1935(昭和10)年08月21日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
292 | 人生 | 今になって、あたりを見まわすと、眼前の事実は二十歳ごろに思っていたことと全部、まるっきりちがっている。たしかに、こんなはずではなかった。 ぼくたちの誤算、--これもぼくたちの不運のもとである。 | 中村貞次郎宛書簡 1934(昭和09)年11月02日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
293 | 人生 | 人の意思では、どうにも、うごかぬものが、この世の中にあるのだ。袖すり合うも他生の縁ということばがある。私は、あなたにかなしい縁を感じている。 「生まれて来たのが、すでにまちがいのもとであった。」 | 酒井真人宛書簡 1935(昭和10)年10月(日付不詳) | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
294 | 人生 | なんじ、信仰うすきものよ。 (死んでは、いかん。死んでは、こまる。) お手紙ずいぶんありがたかった。みな、わかる。くるしさも、ご努力も、胆力も。太陽も。 | 山岸外史宛書簡 1938(昭和13)年10月17日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
295 | 人生 | 幸福は、そのまま素直に受けたほうが、正しい。幸福を、逃げる必要は、ない。 君のいままでの、くるしさ、ぼくには、たいへんよくわかっています。 (中略) 君の、きのうまでの苦悩に、自信を持ちたまえ。ぼくは、信じている。まことに苦しんだものは、報いられる、と。堂々と、幸福を要求したまえ。神に。人の世に。 | 高田英之助宛書簡 1938(昭和13)年10月26日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
296 | 人生 | ひとりでは、いくら決意を固めても、無力の者ゆえ、あがいても、あがいても、なかなか立ち上がることできませぬ。 このたびは、皆様のお情けにて、りっぱに更生の出発させていただき、以後は私、だいじょうぶ、しっかり、やってゆくことできます。 ご信頼ください。 | 中畑慶吉宛書簡 1939(昭和14)年01月10日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
299 | 人生 | 三十五、六歳は、とにかく、生きるのにさえ苦しい年齢なのではないでしょうか。 中谷さんのご経験では、どうでしたでしょうか。 | 中谷孝雄宛書簡 1943(昭和18)年08月17日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
300 | 人生 | 滝のごとく潔白なれ! 滝は跳躍しているから白いのです。 めめしから跳躍せよ! おまえも三十五じゃないか。 | 小山清宛書簡 1945(昭和20)年06月13日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
301 | 人生 | 君、いまさら赤い旗振って、「われら若き兵士プロレタリアの」という歌、うたえますか。無理ですよ。自身の感覚に無理な(白々しさを感ぜしむる)行動はいっさいさけること、必ず大きい破たんを生ずる。 | 堤重久宛書簡 1946(昭和21)年01月15日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
302 | 人生 | また、くさってるごようす。 もっとも人生、それこそ生まれて来なければよかったようなもので、もともと地獄で、たのしいはずがないんだがね。 | 堤重久宛書簡 1946(昭和21)年04月22日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
303 | 人生 | 八方ふさがりのときは、(ぼくにもじつにしばしば、その経験があり、いまだって、いつもその危機にさらされて生きているわけですが)あせって狂奔するよりは、女房にあやまって、ごろ寝するのがいちばんのようです。 | 田中英光宛書簡 1947(昭和22)年04月02日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
304 | 運命 | 私は、たけの子だ。女中の子だって何だってかまわない。私は大声で言える。私は、たけの子だ。兄たちに軽蔑されたっていい。私は、この少女ときょうだいだ。 | 津軽 | 『津軽』 新潮文庫 |
305 | 運命 | 「ブルウタス、汝もまた。」 人間、この苦汁を嘗めぬものが、かつて、ひとりでも、あったろうか。おのれの最も信頼して居るものこそ、おのれの、生涯の重大の刹那に、必ず、おのれの面上に汚き石を投ずる。はっしと投ずる。 | もの思う葦 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
306 | 運命 | 父も母も、この長男について、深く話し合うことを避ける。白痴、 | 桜桃 | 『桜桃』 280円文庫 |
307 | 運命 | 親が無くても子は育つ、という。私の場合、親が有るから子は育たぬのだ。親が、子供の貯金をさえ使い果している始末なのだ。 | 父 | 『ヴィヨンの妻』 新潮文庫 |
308 | 運命 | 私は フランス革命でも、理由はどうあろうと、ギロチンにかけたやつは悪人で、かけられた貴族の美女は善人ということに、後世の詩人は書いてくれます。金木の生家など、いまは「桜の園」です。 | 井伏鱒二宛書簡 1946(昭和21)年01月15日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
309 | 運命 | 私は含羞で、われとわが身を食っています。酒でも飲まなきゃ、ものも言えません。そんなところに「文化」の本質があると私は思います。 (中略) 私は自身を「滅亡の民」だと思っています。まけてほろびて、そのつぶやきが、私たちの文学じゃないのかしらん。 | 河盛好蔵宛書簡 1946(昭和21)年04月30日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
310 | 戦争 | 信じる能力の無い国民は、敗北すると思う。だまって信じて、だまって生活をすすめて行くのが一等正しい。人の事をとやかく言うよりは、自分のていたらくに就いて考えてみるがよい。 | かすかな声 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
311 | 戦争 | 何か物事に感激し、奮い立とうとすると、どこからとも無く、幽かに、トカトントンとあの金槌の音が聞えて来て、とたんに私はきょろりとなり、眼前の風景がまるでもう一変してしまって、(中略)何ともはかない、ばからしい気持になるのです。 | トカトントン | 『ヴィヨンの妻』 新潮文庫 |
312 | 戦争 | 僕は自分がなぜ生きていなければならないのか、それが全然わからないのです。 生きていたい人だけは、生きるがよい。 人間には生きる権利があると同様に、死ぬる権利もある筈です。 | 斜陽--直治の遺書 | 『斜陽』 新潮文庫 |
313 | 戦争 | 私は眉間を割られた気持で、 「お前も女神になりたいのか?」 とたずねた。 家の者は、笑って、 「わるくないわ。」 と言った。 | 女神 | 『津軽通信』 新潮文庫 |
314 | 戦争 | 私たちのいま最も気がかりな事、最もうしろめいたいもの、それをいまの日本の「新文化」は、素通りして走りそうな気がしてならない。 (中略) いまの私が、自身にたよるところがあるとすれば、ただその「津軽の百姓」の一点である。 | 一五年間 | 『太宰治全集 8』 ちくま文庫 |
315 | 戦争 | はにかみを忘れた国は、文明国で無い。いまのソ連は、どうでしょうか。いまの日本の共産党は、どうでしょうか。 | 返事 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
316 | 戦争 | いつから日本の人が、こんなにあさましくて、嘘つきになったのでしょう。 | 冬の花火 | 『グッド・バイ』 新潮文庫 |
317 | 戦争 | 僕には若い敏感なアンテナがある。このアンテナは信頼できる。一国の憂鬱、危機、すぐにこのアンテナは、ぴりりと感ずる。理窟は無いんだ。勘だけなんだ。 | パンドラの匣 | 『パンドラの匣』 新潮文庫 |
318 | 戦争 | 男は嘘をつく事をやめて、女は慾を捨てたら、それでもう日本の新しい建設が出来ると思う。 | 嘘 | 『津軽通信』 新潮文庫 |
319 | 戦争 | (二・二六事件の)組織のないテロリズムは、最も悪質の犯罪である。馬鹿とも何とも言いようがない。 このいい気な愚行のにおいが、 東條の背後に、何かあると思ったら、格別のものもなかった。からっぽであった。怪談に似ている。 | 苦悩の年鑑 | 『グッド・バイ』 新潮文庫 |
320 | 戦争 | はっきり言ったっていいんじゃないかしら。私たちはこの大戦争に於いて、日本に味方した。私たちは日本を愛している、と。 | 返事 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
321 | 戦争 | 我々はみんな日本に味方したんです。 戦争に協力したんです。 負けると分かっていて、いや負けると分かっていたから協力したんです。 見殺しにはできねえ。 | 神楽坂のうなぎ屋にて | 野原一夫『回想 太宰治』 新潮文庫 |
322 | 戦争 | 新年早々、文学報国会から大東亜五大宣言の小説化という難事業を言いつけられ、これもお国のためと思い、他の仕事をあとまわしにして、いささか心胆をくだいています。 | 山下良三宛書簡 1944(昭和19)年01月30日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
323 | 戦争 | 先日は空襲で、神田の印刷工場がやられて、私の出るばかりになっていた「雲雀の声」が全焼したそうで、少しくさりました。でも、本屋では、また印刷をし直すと言っています。 タバコ、そちらいかがです。あまったら、ほんの少しでも、こちらへ送ってくださいまし。あつかましいお願い。 | 小山清宛書簡 1944(昭和19)年12月13日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
324 | 戦争 | 三鷹ではバクダン、甲府ではショウイダン、こんどは砲弾か、どうもことしは運勢よろしくない。まず着の身着のままという状態になった。 甲府にもいられず、妹とわかれて、われら妻子いよいよ津軽行きだ。もう五、六日たつと、出発の予定、前途三千里、決死行だ。 | 堤重久宛書簡 1945(昭和20)年06月13日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
325 | 戦争 | おわりに一つ、当地方の実話をご紹介いたします。 「いくさにも負けたし、バイショウ金などもたくさんとられるだろうし。」 「いや、そんなことは何も心配ない。無条件降伏ではないか。よくもしかし、無条件というところまでこぎつけたものだ。」 大まじめに答えたというその人は、隣村の農業会長とかなんとかりっぱな身分のおかただそうです。神州不滅なり矣 | 井伏鱒二宛書簡 1945(昭和20)年 月日不詳 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
326 | 戦争 | いなか生活も修行の一つと観念しています。 先日、碁打ちの呉清源(ご存じでしょう?)が兄のところへ遊びに来て、二晩とまっていきましたが、おもしろいことを言っていました。 「神様が、いい人ばかりを生き残す。」 | 鰭崎潤宛書簡 1945(昭和20)年10月30日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
327 | 戦争 | このごろはまた文壇は新型便乗、ニガニガしきことかぎりなく、この悪傾向ともまた大いに戦いたいと思っています。 私はなんでも、時を得顔のものに反対するのです。 | 尾崎一雄宛書簡 1946(昭和21)年01月12日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
328 | 戦争 | 保守派をおすすめします。いまの日本で、保守の態度がいちばん美しく思われます。 日本人は皆、戦争に協力したのです。そのためにマ司令部から罰せられるならば、それこそ一億一心みんな牢屋へはいることを希望するかもしれません。 | 井伏鱒二宛書簡 1946(昭和21)年01月15日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
329 | 戦争 | 共産党なんかとは私は真正面から戦うつもりです。ニッポン万歳と今こそ本気に本気に言ってやろうかと思っています。私は単純な | 井伏鱒二宛書簡 1946(昭和21)年01月15日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
330 | 戦争 | 天皇は倫理の儀表として之を支持せよ。恋いしたう対象なければ、倫理は宙に迷うおそれあり。 | 堤重久宛書簡 1946(昭和21)年01月25日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
331 | 思想 | 私はたびたび留置場にいれられ、取り調べの刑事が、私のおとなしすぎる態度に呆れて、「おめえみたいなブルジョアの坊っちゃんに革命なんて出来るものか。本当の革命は、おれたちがやるんだ。」と言った。 その言葉には妙な現実感があった。 | 苦悩の年鑑 | 『グッド・バイ』 新潮文庫 |
332 | 思想 | 新しい形の個人主義 | 『もの思う葦』 新潮文庫 | |
333 | 思想 | 自由思想の内容は、その時、その時で全く違うものだと言っていいだろう。真理を追求して闘った天才たちは、ことごとく自由思想家だと言える。わしなんかは、自由思想の本家本元は、キリストだとさえ考えている。 | パンドラの匣 | 『パンドラの匣』 新潮文庫 |
334 | 思想 | 新現実。 まったく新しい現実。ああ、これをもっともっと高く強く言いたい! | 十五年間 | 『グッド・バイ』 新潮文庫 |
335 | 創作 | だまって居れば名を呼ぶし、近寄って行けば逃げ去るのだ。メリメは猫と女のほかに、もうひとつの名詞を忘れている。傑作の幻影という重大な名詞を。 | 猿面冠者 | 『晩年』 新潮文庫 |
336 | 創作 | わびしさ。それは、貴重な心の糧だ。しかし、そのわびしさが、ただ自分の家庭とだけつながっている時には、はたから見て、頗るみにくいものである。 | 如是我聞 | 『人間失格 グッド・バイ 他一篇』 岩波文庫 |
337 | 創作 | 小鳥を飼い、舞踏を見るのがそんなに立派な生活なのか。刺す。そうも思った。大悪党だと思った。 (中略) あなたは、作家というものは「間抜け」の中で生きているものだということを、もっとはっきり意識してかからなければいけない。 | 川端康成へ | 彩図社文芸部『文豪たちの悪口本』 |
338 | 創作 | 書き出しの巧いというのは、その作者の親切であります。 | 女の決闘 | 『新ハムレット』 新潮文庫 |
339 | 創作 | 芸術は、命令することが、できぬ。芸術は、権力を得ると同時に、死滅する。 | 善蔵を思う | 『きりぎりす』 新潮文庫 |
340 | 創作 | なんだ。君は。こんな贅沢な室で、 おまけにストーブまでついていて、 そのうえ、親切な姉さんまでいて、 それでも、いい小説が書けんのかねえ | 義兄の家の離れを借りて住む友人・中村地平に | 彩図社文芸部『文豪たちの悪口本』 |
341 | 創作 | 小説を書くというのは、日本橋のまんなかで、素っ裸で仰向けに寝るようなものなんだ。 自分をいい子にみせようなんて気持ちは、捨てなくちゃ。 | 東京帝大独文科一年生 野原一夫への言葉 | 野原一夫『回想 太宰治』 新潮文庫 |
342 | 創作 | 巧い短編小説を書ける作家がこの頃すくなくなったように思う。 サービス精神が不足しているからではないかしら。 いい材料を選んで、丹念に料理して、味付けに心を配って、その心づくしが足りないのだ。 | 神楽坂のうなぎ屋にて | 野原一夫『回想 太宰治』 新潮文庫 |
343 | 創作 | 女は愚かだ。けれども、なんだか懸命だ。とてもロマンスにならない程、むき出しに懸命だ。 | 女の決闘 | 『新ハムレット』 新潮文庫 |
344 | 創作 | 芸術家は、やっぱり人ではありません。その胸に、奇妙な、臭い一匹の虫がいます。その虫を、サタン、と人は呼んでいます。 | 女の決闘 | 『新ハムレット』 新潮文庫 |
345 | 創作 | 美しい感情を以て、人は、悪い文学を作る。 | 道化の華 | 『晩年』 新潮文庫 |
346 | 創作 | 佳き文章とは、「情 | もの思う葦 | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
347 | 創作 | 二十世紀の写実とは、あるいは概念の肉化にあるのかも知れませんし、一概に、甘い大げさな形容詞を排斥するのも当るまいと思います。人は世俗の借金で自殺することもあれば、また概念の無形の恐怖から自殺することだってあるのです。 | 女の決闘 | 『新ハムレット』 新潮文庫 |
348 | 創作 | 小説というものは、本来、女子供の読むもので、いわゆる利口な大人が目の色を変えて読み、しかもその読後感を卓を叩いて論じ合うというような性質のものではないのであります。 | 小説の面白さ | 『もの思う葦』 新潮文庫 |
349 | 創作 | 権威ある批評をしようと思ったら、まず、ご自身でもある程度まで製作の苦労をなめてみる事ですね。 | 炎天汗談 | 『太宰治全集 9』 |
350 | 創作 | 文章を書くというのは、固い岩に 岩は固いほどいい。脆い岩だと、ぼろぼろに崩れてしまう。 岩に向かって、 すこしずつ、すこしずつ、形が見えてくる。格闘だ。 きみの岩は、すこし脆すぎたようだ。 | 東京帝大独文科一年生 野原一夫への言葉 | 野原一夫『回想 太宰治』 新潮文庫 |
351 | 創作 | 傑作を書きます。大傑作を書きます。 小説の大体の構想も出来ています。 日本の『桜の園』を書くつもりです。没落階級の悲劇です。 もう題名は決めてある。『斜陽』。斜めの陽。『斜陽』です。 どうです、いい題名でしょう。 | 新潮社にて | 野原一夫『回想 太宰治』 |
352 | 創作 | 私は、今からだを損じて寝ております。けれども、死にたくございませぬ。いまだちっとも仕事らしいもの残さず、四十歳ごろかろうじて、どうにか恥ずかしからぬもの書きうる気持ちで、切実、四十まで生きたく存じます。 | 井伏鱒二宛書簡 1936(昭和11)年07月06日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
353 | 創作 | 芥川賞の打撃、わけわからず、問い合わせ中でございます。かんにんならぬものでございます。 女のくさったような文壇人、いやになりました。 | 小館善四郎宛書簡 1936(昭和11)年08月12日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
354 | 創作 | いのち、惜しからねども、私、いい作家だったになあと思います。 今年十一月までの命、いい腕、けさもつくづく、わが手を見つめました。 | 井伏鱒二宛書簡 1936(昭和11)年09月15日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
355 | 創作 | もう十年、くるしさ、制御し、少しでも明るい世の中つくることに、努力するつもりで、ございます。 このごろ何か、芸術について、動かせぬ信仰、持ちはじめてきました。 たいてい、大丈夫と思います。 自愛いたします。 | 井伏鱒二宛書簡 1939(昭和14)年01月10日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
356 | 創作 | 今月の二十日ごろまでに、短編などの仕事を全部かたづけて、それから、いよいよ「実朝」にとりかかるつもり。ナイテ血ヲハクホトトギス という気持ちです。 来年は私も三十五歳ですから、一つ、中期の佳作をのこしたいと思います。 (早く死にたくてしようがねえ。) | 高梨一男宛書簡 1942(昭和17)年10月17日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
357 | 創作 | 庄助様の文才については私もひそかに期待するところがございまして、けれどもまだおとしもお若いし、もう五、六年もたってからと思っておりましたのですが、まことに私も呆然たるものでございます。 日記はたしかに大事にお預かり申しあげます。ゆっくり拝読して故人のご遺志に添いたいと存じております。 | 木村重太郎宛書簡 1942(昭和17)年10月17日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
358 | 創作 | それからある季刊雑誌に長編「人間失格」を連載の予定なり。その季刊雑誌は、ぼくがその長編執筆中は、他のどこにも書かずともぼくの生活費を支給してくれるらしい。 ぼくも三十八だからね、(君も、もういいとしになったろう)四十までには、大傑作を一つ書いておきたいよ。 | 堤重久宛書簡 1946(昭和21)年01月15日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
359 | 創作 | 前に書いた「冬の花火」という三幕悲劇、これは実にすごい大悲劇(笑ってはいけない)。劇界、文学界に原子バクダンを投ずる意気ごみ、これはすでに筑摩書房から出ている「展望」に送りました、六月号に掲載されることになっています、いまのところ「展望」などがいちばんいい雑誌ということになっているようです。 | 堤重久宛書簡 1946(昭和21)年04月22日 | 『愛と苦悩の手紙』 角川文庫クラシックス |
360 | 遺書 | 子供は皆 あまり出来ないやうですけど 陽気に育ててやつて下さい たのみます いつもお前たちの事を考へ、 さうしてメソメソ泣きます | 太宰治が残した遺書 |