タグ:太宰治名言集, 恋愛, 愛, 希望, 哲学, 真理, 生活, 自己, 処世, 人生, 運命, 戦争, 遺書
No | 分類 | 名言 | 作品 | 書籍等 |
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1 | 恋愛 | 恋愛は、チャンスではないと思う。私はそれを意志だと思う。 | チャンス | 『チャンス』オンデマンド(ペーパーバック) |
2 | 恋愛 | 恋愛とは何か。私は言う。それは非常に恥ずかしいものである。 | チャンス | 『チャンス』オンデマンド(ペーパーバック) |
3 | 恋愛 | 戦闘、開始。 もし、私が恋ゆえに、イエスのこの教えをそっくりそのまま必ず守ることを誓ったら、イエスさまはお叱しかりになるかしら。なぜ、「恋」がわるくて、「愛」がいいのか、私にはわからない。同じもののような気がしてならない。 | 斜陽 | 『斜陽』(角川文庫) |
4 | 恋愛 | 人間は恋と革命のために生れて来たのだ。 | 斜陽 | 『斜陽』(角川文庫) |
5 | 恋愛 | 女は、恋をすれば、それっきりです。ただ、見ているより他はありません。 | 女の決闘 | 『女の決闘』Kindle版 |
6 | 恋愛 | 私はあなたを誇りにしていますし、また、生れる子供にも、あなたを誇りにさせようと思っています。 私生児と、その母。 けれども私たちは、古い道徳とどこまでも争い、太陽のように生きるつもりです。 (中略) いまの世の中で、一ばん美しいのは犠牲者です。 | 斜陽 | 『斜陽』(角川文庫) |
7 | 恋愛 | 私は、ひとの恋愛談を聞く事は、あまり好きでない。恋愛談には、かならず、どこかに言い繕いがあるからである。 | 令嬢アユ | 『令嬢アユ』Kindle版 |
8 | 恋愛 | 惚れられるつらさ、愛せられる不安 | 人間失格 | 『人間失格』(新潮文庫) |
9 | 恋愛 | 革命も恋も、実はこの世で最もよくて、おいしい事で、あまりいい事だから、おとなのひとたちは意地わるく私たちに青い葡萄だと嘘ついて教えていたのに違いないと思うようになったのだ。私は確信したい。人間は恋と革命のために生れて来たのだ。 | 斜陽 | 『斜陽』(角川文庫) |
10 | 恋愛 | 愛することは命がけだよ。甘いとは思わない。 | 雌に就いて | 『雌に就いて』Kindle版 |
11 | 恋愛 | てれくさくて言えないというのは、つまりは自分を大事にしているからだ。 | 新ハムレット | 『新ハムレット』(新潮文庫) |
12 | 結婚 | 夫と妻は、その生涯において、幾度も結婚をし直さなければならぬ。お互いが、相手の真価を発見して行くためにも、次々の危機に打ち勝って、別離せずに結婚をし直し、進まなければならぬ。 | ろまん燈籠 | 『ろまん燈籠』(新潮文庫) |
13 | 結婚 | ここに、新しい第二の結婚生活がはじまる。曰く、相互の尊敬である。相互の尊敬なくして、真の結婚は成立しない。 | ろまん燈籠 | 『ろまん燈籠』(新潮文庫) |
14 | 結婚 | 結婚は、家庭は、努力であると思ひます。 厳粛な努力であると信じます。浮いた気持ちは、ございません。貧しくとも一生大事に努めます。ふたたび私が、破婚を繰りかへしたときには、私を、完全の狂人として、棄てて下さい。 | 井伏鱒二宛書簡・1938(昭和13)年 | |
15 | 愛 | 本当に愛しているならば、無意識に愛の言葉も出るものだ。どもりながらでもよい。たった一言でもよい。せっぱつまった言葉が出るものだ。愛は言葉だ。言葉がなくなりゃ、同時にこの世の中に、愛情もなくなるんだ。 | 新ハムレット | 『新ハムレット』(新潮文庫) |
16 | 愛 | 怒涛に飛び込む思いで愛の言葉を叫ぶところに、愛の実体があるのだ。 | 新ハムレット | 『新ハムレット』(新潮文庫) |
17 | 愛 | だって人は、本当に愛して居れば、かえって愛の言葉など、白々しくて言いたくなくなるものでございます。 | 新ハムレット | 『新ハムレット』(新潮文庫) |
18 | 愛 | 私はその日までHを、謂わば掌中の玉のように大事にして、誇っていたのだということに気附いた。こいつの為に生きていたのだ。私は女を、無垢のままで救ったとばかり思っていたのである。 | 東京八景 | 『東京八景』オンデマンド(ペーパーバック) |
19 | 愛 | 愛は最高の奉仕だ。みじんも、自分の満足を思ってはいけない。 | 火の鳥 | 『火の鳥』オンデマンド(ペーパーバック) |
20 | 愛 | 愛は言葉だ。言葉が無くなれや、同時にこの世の中に、愛情も無くなるんだ。愛が言葉以外に、実体として何かあると思っていたら、大間違いだ。 | 新ハムレット | 『新ハムレット』(新潮文庫) |
21 | 愛 | 愛は、この世に存在する。きっと、在る。見つからぬのは、愛の表現である。その作法である。 | 思案の敗北 | 『思案の敗北』Kindle版 |
22 | 愛 | おれは、この女を愛している。どうしていいか、わからないほど愛している。そいつが、おれの苦悩のはじまりなんだ。けれども、もう、いい。おれは、愛しながら遠ざかり得る、何かしら強さを得た。生きて行くためには、愛をさえ犠牲にしなければならぬ。 | 姥捨 | 『姥捨』Kindle版 |
23 | 希望 | 明日もまた、同じ日が来るのだろう。幸福は一生、来ないのだ。それは、わかっている。けれども、きっと来る、あすは来る、と信じて寝るのがいいのでしょう。 | 女生徒 | 『女生徒』(角川文庫) |
24 | 希望 | 幸福は一夜おくれて来る。 | 女生徒 | 『女生徒』(角川文庫) |
25 | 希望 | 兄さんは、まだ寝ているのだ。むっくり上半身を起こして、「なんだ、もう行くのか。神の国は何に似たるか。」と言って、笑った。「一粒の芥種のごとし。」と答えたら、「育ちて樹となれ。」と愛情のこもった口調で言った。 | 正義と微笑 | 『正義と微笑』(SDP Bunko) |
26 | 希望 | さらば読者よ、命あらばまた他日。元気で行こう。絶望するな。では、失敬。 | 津軽 | 『津軽』(新潮文庫) |
27 | 希望 | 私たちは、生きていさえすればいいのよ | ヴィヨンの妻 | 『ヴィヨンの妻』(新潮文庫) |
28 | 哲学 | 僕は自分がなぜ生きていなければならないのか、それが全然わからないのです。 | 斜陽 | 『斜陽』(角川文庫) |
29 | 哲学 | 人間は、めしを食べなければ死ぬから、そのために働いて、めしを食べなければならぬ、という言葉ほど自分にとって難解で晦渋で、そうして脅迫めいた響きを感じさせる言葉は、無かったのです。 | 人間失格 | 『人間失格』(新潮文庫) |
30 | 哲学 | 人間は、みな、同じものだ。 なんという卑屈な言葉であろう。人をいやしめると同時に、みずからをもいやしめ、何のプライドも無く、あらゆる努力を放棄せしめるような言葉。 | 斜陽--直治の遺書 | 『斜陽』(角川文庫) |
31 | 哲学 | 人は人に影響を与えることもできず、また、人から影響を受けることもできない | もの思う葦 | 『もの思う葦』(新潮文庫) |
32 | 哲学 | 神に問う。信頼は罪なりや。 | 人間失格 | 『人間失格』(新潮文庫) |
33 | 哲学 | 所謂「官僚的」という気風の風洞は何か。私は、それをたどって行き、家庭のエゴイズム、とでもいうべき陰鬱な観念に突き当り、そうして、とうとう、次のような、おそろしい結論を得たのである。 曰く、家庭の幸福は諸悪の本。 | 家庭の幸福 | 『家庭の幸福』オンデマンド(ペーパーバック) |
34 | 哲学 | 幸福感というものは、悲哀の川の底に沈んで、幽かに光っている砂金のようなものではないだろうか。 | 斜陽 | 『斜陽』(角川文庫) |
35 | 哲学 | 言葉というものは、生きている事の不安から、芽ばえて来たものじゃないですかね。 | 「お伽草紙」浦島さん | 『お伽草紙』(新潮文庫) |
36 | 哲学 | ぽかんと花を眺めながら、人間も、本当によいところがある、と思った。花の美しさを見つけたのは人間だし、花を愛するのも人間だもの。 | 女生徒 | 『女生徒』(角川文庫) |
37 | 哲学 | おそろしいのはね、この世の中の、どこかに神がいる、という事なんです。いるんでしょうね? | ヴィヨンの妻 | 『ヴィヨンの妻』(新潮文庫) |
38 | 哲学 | アカルサハ、ホロビノ姿デアラウカ。人モ家モ、暗イウチハマダ滅亡セヌ。 | 右大臣実朝 | 『惜別』(新潮文庫) |
39 | 真理 | 老人の永い生涯に於いて、嘘でなかったのは、生れたことと、死んだことと、二つであった。 | 逆行 | 『晩年』(新潮文庫) |
40 | 真理 | 理窟はないんだ。女の好ききらいなんて、ずいぶんいい加減なものだと思う。 | 女生徒 | 『女生徒』(角川文庫) |
41 | 真理 | 本当の気品というものは、真黒いどっしりした大きい岩に白菊一輪だ。 | 津軽 | 『津軽』(新潮文庫) |
42 | 真理 | 僕は今まで、説教されて改心したことが、まだ一度もない。説教している人を偉いなあと思ったことも、まだ一度もない。 | 正義と微笑 | 『正義と微笑』(SDP Bunko) |
43 | 真理 | 富士には、月見草がよく似合う。 | 富嶽百景 | 『富嶽百景・走れメロス 他八篇』(岩波文庫) |
44 | 真理 | 不良とは、優しさの事ではないかしら | 斜陽 | 『斜陽』(角川文庫) |
45 | 真理 | 不良でない人間があるだろうか | 斜陽 | 『斜陽』(角川文庫) |
46 | 真理 | 鉄は赤く熱しているうちに打つべきである。花は満開のうちに眺むべきである。私は晩年の芸術というものを否定している。 | もの思う葦 | 『もの思う葦』(新潮文庫) |
47 | 真理 | 男って、正直ね。何もかも、まる見えなのに、それでも、何かと女をだました気で居るらしいのね。犬は、爪を隠せないのね。 | 火の鳥 | 『火の鳥』オンデマンド(ペーパーバック) |
48 | 真理 | 他の生き物には絶対に無くて、人間にだけあるもの。それはね、ひめごと、というものよ。 | 斜陽 | 『斜陽』(角川文庫) |
49 | 真理 | 人間は嘘をつく時には、必ず、まじめな顔をしているものである | 斜陽 | 『斜陽』(角川文庫) |
50 | 真理 | 人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。 | 走れメロス | 『走れメロス』(新潮文庫) |
51 | 真理 | 真理は行為だ。愛情も行為だ。表現のない真理なんてありゃしない。 | 火の鳥 | 『火の鳥』オンデマンド(ペーパーバック) |
52 | 真理 | 信実とは、決して空虚な妄想ではなかった | 走れメロス | 『走れメロス』(新潮文庫) |
53 | 真理 | 信じるところに現実はあるのであって、現実は決して人を信じさせる事が出来ない。 | 津軽 | 『津軽』(新潮文庫) |
54 | 真理 | 諸君が、もし恋人と逢って、逢ったとたんに、恋人がげらげら笑い出したら、慶祝である。必ず、恋人の非礼をとがめてはならぬ。恋人は、君に逢って、君の完全のたのもしさを、全身に浴びているのだ。 | 富嶽百景 | 『富嶽百景・走れメロス 他八篇』(岩波文庫) |
55 | 真理 | 事実は、小説よりも奇なり、と言う。しかし誰も見ていない事実だって世の中には、あるのだ。 | 一つの約束 | 『一つの約束』Kindle版 |
56 | 真理 | 死と隣合せに生活している人には、生死の問題よりも、一輪の花の微笑が身に沁しみる。 | パンドラの匣 | 『パンドラの匣』(新潮文庫) |
57 | 真理 | 傑作も駄作もありやしません。人がいいと言えば、よくなるし、悪いと言えば、悪くなるんです。 | ヴィヨンの妻 | 『ヴィヨンの妻』(新潮文庫) |
58 | 真理 | 議論とは、往々にして妥協したい情熱である。 | かすかな声 | 『かすかな声』Kindle版 |
59 | 真理 | だまって居れば名を呼ぶし、近寄って行けば逃げ去るのだ。メリメは猫と女のほかに、もうひとつの名詞を忘れている。傑作の幻影という重大な名詞を。 | 猿面冠者 | 『晩年』(新潮文庫) |
60 | 真理 | だまされる人よりも、だます人のほうが数十倍苦しいさ。地獄に落ちるのだからね。 | かすかな声 | 『かすかな声』Kindle版 |
61 | 真理 | 学問なんて、覚えると同時に忘れてしまってもいいものなんだ。けれども、全部忘れてしまっても、その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものだ。これだ。これが貴いのだ。勉強しなければいかん。 | 正義と微笑 | 『正義と微笑』(SDP Bunko) |
62 | 真理 | お酒飲みというものは、よそのものたちが酔っているのを見ても、一種のよろこばしさを覚えるものらしい。 | 「お伽草紙」瘤取り | 『お伽草紙・新釈諸国噺』(岩波文庫) |
63 | 真理 | 「若い女の欠点」 個性の無いこと。深味が無い。理想の無いこと。批判はあっても、自分の生活に直接むすびつける積極性の無いこと。無反省。本当の自覚、自愛、自重がない。本当の意味の謙遜がない。独創性にとぼしい。お上品ぶっていながら、気品がない。 | 女生徒 | 『女生徒』(角川文庫) |
64 | 生活 | 知らん振りして、信じて、しばらく努力を続けて行こうではないか。 | 津軽 | 『津軽』(新潮文庫) |
65 | 生活 | 誰だって、みんな、深い傷を背負って、そ知らぬふりして生きているのだ。 | 火の鳥 | 『火の鳥』オンデマンド(ペーパーバック) |
66 | 生活 | 生活。 よい仕事をしたあとで 一杯のお茶をすする お茶のあぶくに きれいな私の顔が いくつもいくつも うつっているのさ どうにか、なる。 | 葉 | 『晩年』(新潮文庫) |
67 | 生活 | 純粋を追うて、窒息するよりは、私は濁っても大きくなりたいのである。いまは、そう思っている。なんのことは、ない、一言で言える。負けたくないのである。 | 懶惰の歌留多 | 『女性作家が選ぶ太宰治』(講談社文芸文庫) |
68 | 生活 | 私はなんにも知りません。しかし、伸びて行く方向に陽が当たるようです。 | パンドラの匣 | 『パンドラの匣』(新潮文庫) |
69 | 生活 | 私は よい人間です。しつかりして居りますが、いままで運がわるくて、死ぬ一歩手前まで来てしまひました。芥川賞をもらへば、私は人の情けに泣くでせう。(中略)助けて下さい。佐藤さんは私を助けることができます。私をきらはないで下さい。 | 佐藤春夫宛書簡・1936(昭和11)年 | |
70 | 生活 | 死のうと思っていた。ことしの正月、よそから着物を一反もらった。お年玉としてである。着物の布地は麻であった。鼠色の細かい縞目が織り込められていた。これは夏に着る着物であろう。夏まで生きていようと思った。 | 葉 | 『晩年』(新潮文庫) |
71 | 生活 | 今日一日を、よろこび、努め、人には優しくして暮らしたい。 | 新郎 | 『ろまん燈籠』(新潮文庫) |
72 | 生活 | 一日一日を、たっぷりと生きて行くより他ほかは無い。明日のことを思い煩わずらうな。明日は明日みずから思い煩わん。きょう一日を、よろこび、努め、人には優しくして暮したい。 | 新郎 | 『ろまん燈籠』(新潮文庫) |
73 | 生活 | 一時の恥を、しのんで下さい。十度の恥を、しのんで下さい。もう、三年のいのち、保っていて下さい。われらこそ、光の子に、なり得る、しかも、すべて、あなたへの愛のため。 | HUMAN LOST | 『HUMAN LOST』オンデマンド(ペーパーバック) |
74 | 生活 | トランプの遊びのように、マイナスを全部あつめるとプラスに変わるという事は、この世の道徳には起こり得ない事でしょうか。 | ヴィヨンの妻 | 『ヴィヨンの妻』(新潮文庫) |
75 | 生活 | すべての思念にまとまりをつけなければ生きて行けない、そんなけちな根性をいったい誰から教わった? | 道化の華 | 『晩年』(新潮文庫) |
76 | 生活 | ここで犬死にしてはつまらない。逃げられるだけは逃げましょうよ。 | 貨幣 | 『貨幣』オンデマンド(ペーパーバック) |
77 | 自己 | 芸術家というものは、つくづく困った種族である。鳥籠一つを、必死にかかえて、うろうろしている。その鳥籠を取り上げられたら、彼は舌を噛んで死ぬだろう。なるべくなら、取り上げないで、ほしいのである。 | 一灯 | 『一灯』Kindle版 |
78 | 自己 | 私の欲していたもの、全世界ではなかった。百年の名声でもなかった。タンポポの花一輪の信頼が欲しくて、チサの葉一枚のなぐさめが欲しくて、一生を棒に振った。 | 二十世紀旗手 | 『二十世紀旗手』(新潮文庫) |
79 | 自己 | 駄目な男というものは幸福を受け取るに当たってさえ下手くそを極めるものである。 | 「新釈諸国噺」貧の意地 | 『お伽草紙・新釈諸国噺』(岩波文庫) |
80 | 自己 | 見よ、前方に平和の図がある。お慶親子三人、のどかに海に石の投げっこしては笑い興じている。声がここまで聞えて来る。 (中略) 負けた。これは、いいことだ。そうなければ、いけないのだ。かれらの勝利は、また私のあすの出発にも、光を与える。 | 黄金風景 | 『きりぎりす』(新潮文庫) |
81 | 自己 | 人から尊敬されようと思わぬ人たちと遊びたい。けれども、そんないい人たちは、僕と遊んでくれやしない。 | 斜陽 | 『斜陽』(角川文庫) |
82 | 自己 | 子供より親が大事、と思いたい。子供のために、などと古風な道学者みたいな事を殊勝らしく考えてみても、何、子供よりも、その親のほうが弱いのだ。 | 桜桃 | 『桜桃』(280円文庫) |
83 | 自己 | 弱虫は、幸福をさえおそれるものです。綿で怪我するんです。幸福に傷つけられる事もあるんです。 | 人間失格 | 『人間失格』(新潮文庫) |
84 | 自己 | 自分には幸福も不幸もありません。ただ、一切は過ぎて行きます。自分が今まで阿鼻叫喚で生きて来た所謂『人間』の世界に於いて、たった一つ、真理らしく思はれたは、それだけでした。ただ、一さいは過ぎて行きます。 | 人間失格 | 『人間失格』(新潮文庫) |
85 | 自己 | どうか、むりでも、ほがらかに、私をからかつて下さい。 私は決してお調子に乗るやうなことございませんから、井伏さんが、憂うつなお顔をして居られると、私は、実際しょげて、くるしくてなりません。 | 井伏鱒二宛書簡・1938(昭和13)年 | |
86 | 処世 | 良き師持ちたるこの身の幸福を、すこしも早う、いちぶいちりんあやまちなく、はつきり、お教へしなければならぬ、たのしき義務をさへ感じました。 (中略) ああ、私は、甘えることと毆ることと、二つの生きかたしか知らぬ男だ。 | 先生三人 | |
87 | 処世 | 大人というものは侘しいものだ。愛し合っていても、用心して、他人行儀を守らなければならぬ。 | 津軽 | 『津軽』(新潮文庫) |
88 | 処世 | 善をなす場合には、いつも詫びながらしなければいけない。善ほど他人を傷つけるものはないのだから。 | 美男子と煙草 | 『美男子と煙草』Kindle版 |
89 | 処世 | 生活人の強さというのは、はっきりノオと言える勇気ですね。 | 未帰還の友に | 『未帰還の友に』オンデマンド(ペーパーバック) |
90 | 処世 | 世の中から変人とか奇人などといわれている人間は、案外気の弱い度胸のない、そういう人が自分を護るための擬装をしているのが多いのではないかと思われます。やはり生活に対して自信のなさから出ているのではないでしょうか。 | わが半生を語る | 『太宰治全集 10』(ちくま文庫) |
91 | 処世 | 叔母の言う。 「お前はきりょうがわるいから、愛嬌だけでもよくなさい。お前はからだが弱いから、心だけでもよくなさい。お前は嘘がうまいから、行いだけでもよくなさい」 | 葉 | 『晩年』(新潮文庫) |
92 | 処世 | 次々と思い出が蘇る。井伏さんは時々おっしゃる。 「人間は、一緒に旅行をすると、その旅の道連れの本性がよくわかる。」 | 『井伏鱒二選集』第四巻 後記 | 『井伏鱒二選集』後記 オンデマンド(ペーパーバック) |
93 | 処世 | 好奇心を爆発させるのも冒険、また、好奇心を抑制するのも、やっぱり冒険、どちらも危険さ。人には、宿命というものがあるんだよ。 | 「お伽草紙」浦島さん | 『お伽草紙』(新潮文庫) |
94 | 処世 | 一ばんきらいなものは、人を疑う事と、それから、嘘をつく事だ。 | 走れメロス | 『走れメロス』(新潮文庫) |
95 | 処世 | まじめに努力して行くだけだ。これからは、単純に、正直に行動しよう。知らない事は、知らないと言おう。出来ない事は、出来ないと言おう。思わせ振りを捨てたならば、人生は、意外にも平坦なところらしい。 | 正義と微笑 | 『正義と微笑』(SDP Bunko) |
96 | 処世 | とにかくね、生きているのだからね、インチキをやっているに違いないのさ。 | 斜陽 | 『斜陽』(角川文庫) |
97 | 処世 | どうも、陸上の生活は騒がしい。お互い批評が多すぎるよ。陸上生活の会話の全部が、人の悪口か、でなければ自分の広告だ。うんざりするよ。 | 「お伽草紙」浦島さん | 『お伽草紙』(新潮文庫) |
98 | 処世 | それは世間が、ゆるさない 世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう? そんな事をすると、世間からひどいめに逢うぞ 世間じゃない。あなたでしょう? いまに世間から葬られる 世間じゃない。葬むるのは、あなたでしょう? | 人間失格 | 『人間失格』(新潮文庫) |
99 | 処世 | おれだって、弱い心を持っている。お前にまきこまれて、つい人の品評をしたくなる。(中略)お前たちには、ひとの悪いところばかり眼について、自分自身のおそろしさにまるで気がついていないのだからな。おれは、ひとがこわい。 | 「お伽草紙」舌切雀 | 『お伽草紙』(新潮文庫) |
100 | 処世 | にこにこ笑っている私を、太宰ぼけたな、と囁いている友人もあるようだ。それは間違いないのだ、呆けたのだ、けれども、――と言いかけて、あとは言わぬ。ただ、これだけは信じたまえ。「私は君を、裏切ることは無い。」 | 鴎 | 『きりぎりす』(新潮文庫) |
101 | 処世 | そうだ! 僕はやるぞ。なにも宿命だ。いやな仲間もまた一興じゃないか。 | ダス・ゲマイネ | 『虚構の彷徨 ダス・ゲマイネ』(講談社文庫) |
102 | 処世 | あせつては、いけない。 まづ、しづかに横臥がいちばん。 | 田中英光宛書簡・1947(昭和22)年 | |
103 | 人生 | 友と友の間の信実は、この世で一ばん誇るべき宝なのだからな。 | 走れメロス | 『走れメロス』(新潮文庫) |
104 | 人生 | 年月は、人間の救いである。 忘却は、人間の救いである。 | 「お伽草紙」浦島さん | 『お伽草紙』(新潮文庫) |
105 | 人生 | 怒る時に怒らなければ、人間の甲斐がありません。 | 駈込み訴え | 『駈込み訴え』オンデマンド(ペーパーバック) |
106 | 人生 | 中途で倒れるのは、はじめから何もしないのと同じ事だ。 | 走れメロス | 『走れメロス』(新潮文庫) |
107 | 人生 | 男には、不幸だけがあるんです。いつも恐怖と、戦ってばかりいるのです。 | ヴィヨンの妻 | 『ヴィヨンの妻』(新潮文庫) |
108 | 人生 | 大人とは、裏切られた青年の姿である。 | 津軽 | 『津軽』(新潮文庫) |
109 | 人生 | 即ち荒っぽい大きな歓楽を避けてさえいれば、自然また大きな悲哀もやって来ないのだ。 | 人間失格 | 『人間失格』(新潮文庫) |
110 | 人生 | 生きている事。ああ、それは、何というやりきれない息もたえだえの大事業であろうか。 | 斜陽 | 『斜陽』(角川文庫) |
111 | 人生 | 世の中から、追い出されてもよし、いのちがけで事を行うは罪なりや。 私は、自分の利益のために書いているのではないのである。信ぜられないだろうな。 最後に問う。弱さ、苦悩は罪なりや。 | 如是我聞 | 『人間失格 グッド・バイ 他一篇』(岩波文庫) |
112 | 人生 | 人生の出発は、つねにあまい。まず試みよ。破局の次にも、春は来る。桜の園を取りかへす術なきや。 | 花燭 | 『花燭』オンデマンド(ペーパーバック) |
113 | 人生 | 人間三百六十五日、何の心配も無い日が、一日、いや半日あったら、それは仕合せな人間です。 | ヴィヨンの妻 | 『ヴィヨンの妻』(新潮文庫) |
114 | 人生 | 人間は不幸のどん底につき落とされ、ころげ廻りながらも、いつかしら一縷の希望の糸を手さぐりで捜し当てているものだ。 | パンドラの匣 | 『パンドラの匣』(新潮文庫) |
115 | 人生 | 人間は、自由に生きる権利を持っていると同時に、いつでも勝手に死ねる権利も持っているのだけれども、しかし、「母」の生きているあいだは、その死の権利は留保されなければならないと僕は考えているんです。 | 斜陽 | 『斜陽』(角川文庫) |
116 | 人生 | 人間のプライドの究極の立脚点は、あれにも、これにも死ぬほど苦しんだ事があります、と言い切れる自覚ではないか。 | 東京八景 | 『東京八景』オンデマンド(ペーパーバック) |
117 | 人生 | 人は、いつも、こう考えたり、そう思ったりして行路を選んでいるものでは無いからでもあろう。多くの場合、人はいつのまにか、ちがう野原を歩いている。 | 東京八景 | 『東京八景』オンデマンド(ペーパーバック) |
118 | 人生 | 人の心の転機は、ほかの人には勿論わからないし、また、その御本人にも、はっきりわかっていないものではなかろうか。多くの場合、人は、いつのまにやら自分の体内に異った血が流れているのに気附いて、愕然とするものではあるまいか。 | 惜別 | 『惜別』(新潮文庫) |
119 | 人生 | 信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。 | 走れメロス | 『走れメロス』(新潮文庫) |
120 | 人生 | 笑われて、笑われて、つよくなる。 | HUMAN LOST | 『HUMAN LOST』オンデマンド(ペーパーバック) |
121 | 人生 | 若い時から名誉を守れ | 走れメロス | 『走れメロス』(新潮文庫) |
122 | 人生 | 嫉妬というものは、なんという救いのない狂乱。それも肉体だけの狂乱。一点美しいところもない醜怪きわめたものか。世の中には、まだまだ私の知らない、いやな地獄があったのですね。 | 皮膚と心 | 『30代作家が選ぶ太宰治』(講談社文芸文庫) |
123 | 人生 | 自分の運命を自分で規定しようとして失敗した。ふらふら帰宅すると、見知らぬ不思議な世界が開かれていた。Hは、玄関で私の背筋をそっと撫でた。他の人も皆、よかった、よかったと言って、私を、いたわってくれた。人生の優しさに私は呆然とした。 | 東京八景 | 『東京八景』オンデマンド(ペーパーバック) |
124 | 人生 | 私は縁側に腰かけ、煙草を吸って、ひとかたならず満足であった。神は、在る。きっと在る。人間到るところ青山。見るべし、無抵抗主義の成果を。私は自分を、幸福な男だと思った。 | 善蔵を思う | 『善蔵を思う』オンデマンド(ペーパーバック) |
125 | 人生 | 私は自分を、幸福な男だと思った。悲しみは、金を出しても買え、という言葉が在る。青空は牢屋の窓から見た時に最も美しい、とか。感謝である。この薔薇の生きて在る限り、私は心の王者だと、一瞬思った。 | 善蔵を思う | 『善蔵を思う』オンデマンド(ペーパーバック) |
126 | 人生 | 私は、純粋というものにあこがれた。無報酬の行為。まったく利己の心のない生活。けれども、それは、至難の業であった。私はただ、やけ酒を飲むばかりであった。私の最も憎悪したものは、偽善であった。 | 苦悩の年鑑 | 『苦悩の年鑑』オンデマンド(ペーパーバック) |
127 | 人生 | 幸福の便りというものは、待っている時には決して来ないものだ。 | 正義と微笑 | 『正義と微笑』(SDP Bunko) |
128 | 人生 | 君は、だらしが無い。旅行をなさるそうですが、それもよかろう。君に今、一ばん欠けているものは、学問でもなければお金でもない。勇気です。 | 風の便り | 『風の便り』オンデマンド(ペーパーバック) |
129 | 人生 | 君のような秀才にはわかるまいが、「自分の生きていることが、人に迷惑をかける。僕は余計者だ」という意識ほどつらい思いは世の中に無い。 | パンドラの匣 | 『パンドラの匣』(新潮文庫) |
130 | 人生 | 疑いながら、ためしに右へ曲るのも、信じて断乎として右へ曲るのも、その運命は同じ事です。どっちにしたって引き返すことは出来ないんだ。 | 「お伽草紙」浦島さん | 『お伽草紙』(新潮文庫) |
131 | 人生 | 眼鏡をとって人を見るのも好き。相手の顔が、皆、優しく、きれいに、笑って見える。 | 女生徒 | 『女生徒』(角川文庫) |
132 | 人生 | 過ぎ去ったことは、忘れろ。そういっても、無理かも知れぬが、しかし人間は、何か一つ触れてはならぬ深い傷を背負って、それでも、堪えて、そ知らぬふりして生きているのではないのか。 | 火の鳥 | 『火の鳥』オンデマンド(ペーパーバック) |
133 | 人生 | 何もしない先から、僕は駄目だと決めてしまうのは、それは怠情だ。 | みみずく通信 | 『みみずく通信』オンデマンド(ペーパーバック) |
134 | 人生 | 安楽なくらしをしているときは、絶望の詩を作り、ひしがれたくらしをしているときは、生のよろこびを書きつづる。 | 葉 | 『晩年』(新潮文庫) |
135 | 人生 | なぜか、涙が出た。しくしく嗚咽をはじめた。おれは、まだまだ子供だ。子供が、なんでこんな苦労をしなければならぬのか。 | 姥捨 | 『姥捨』Kindle版 |
136 | 人生 | じぶんで、したことは、そのように、はっきり言わなければ、かくめいも何も、おこなわれません。じぶんで、そうしても、他におこないをしたく思って、にんげんは、こうしなければならぬ、などとおっしゃっているうちは、にんげんの底からの革命が、いつまでも、できないのです。 | かくめい | |
137 | 人生 | このたびの戦争のために私もいろいろ人並の苦労は致しましたけれども、それでも、夫の優やさしさを思えば、この八年間、私は仕合せ者であったと言いたくなるのです。 | おさん | 太宰治小品選第3巻(オーディオブックCD3枚組) |
138 | 人生 | くるしいだろうねぇ。けれども苦しいのは君だけじゃない。夕焼けの悲しさは、僕にだってよくわかる、けれども、こらえて生きていこう | 新ハムレット | 『新ハムレット』(新潮文庫) |
139 | 人生 | ああ、人間は、お互い何も相手をわからない、まるっきり間違って見ていながら、無二の親友のつもりでいて、一生、それに気附かず、相手が死ねば、泣いて弔詞なんかを読んでいるのではないでしょうか。 | 人間失格 | 『人間失格』(新潮文庫) |
140 | 人生 | ああ、もはや憩いも、僕にはてれくさくなっている。僕は、ひとりの女をさえ、注釈なしには愛することができぬのだ。おろかな男は、やすむのにさえ、へまをする。 | 道化の華 | 『晩年』(新潮文庫) |
141 | 人生 | 「女には、幸福も不幸も無いものです」 「そうなの? そう言われると、そんな気もして来るけど、それじゃ、男の人は、どうなの?」 「男には、不幸だけがあるんです。いつも恐怖と、戦ってばかりいるのです」 | ヴィヨンの妻 | 『ヴィヨンの妻』(新潮文庫) |
142 | 運命 | 私は、たけの子だ。女中の子だって何だってかまわない。私は大声で言える。私は、たけの子だ。兄たちに軽蔑されたつていい。私は、この少女ときょうだいだ。 | 津軽 | 『津軽』(新潮文庫) |
143 | 運命 | 父も母も、この長男について、深く話し合うことを避ける。白痴、唖(おし)、……それを一言でも口に出して言って、二人で肯定し合うのは、あまりに悲惨だからである。母は時々、この子を固く抱きしめる。父はしばしば発作的に、この子を抱いて川に飛び込み死んでしまいたく思う。 | 桜桃 | 『桜桃』(280円文庫) |
144 | 運命 | 親が無くても子は育つ、という。私の場合、親が有るから子は育たぬのだ。 | 父 | 『父』Kindle版 |
145 | 戦争 | 何か物事に感激し、奮い立とうとすると、どこからとも無く、幽かに、トカトントンとあの金槌の音が聞えて来て、とたんに私はきょろりとなり、眼前の風景がまるでもう一変してしまって、(中略)何ともはかない、ばからしい気持になるのです。 | トカトントン | 『ヴィヨンの妻』(新潮文庫) |
146 | 戦争 | 私は眉間を割られた気持で、 「お前も女神になりたいのか?」 とたずねた。 家の者は、笑って、 「わるくないわ。」 と言った。 | 女神 | 『女神』オンデマンド(ペーパーバック) |
147 | 戦争 | 私たちのいま最も気がかりな事、最もうしろめいたいもの、それをいまの日本の「新文化」は、素通りして走りそうな気がしてならない。 (中略) いまの私が、自身にたよるところがあるとすれば、ただその「津軽の百姓」の一点である。 | 一五年間 | 『太宰治全集 8』(ちくま文庫) |
148 | 遺書 | 子供は皆 あまり出来ないやうですけど 陽気に育ててやつて下さい たのみます いつもお前たちの事を考へ、 さうしてメソメソ泣きます | 太宰治が残した遺書 |